研究実績の概要 |
令和元年度は、走査型透過電子顕微鏡を用いて歪み計測法を確立した。開発した手法は、原理的には、試料の結晶格子と走査線のわずかに違いによって生じたモアレ縞を測定することによって、試料の場所によって異なる格子間隔を高い精度で測定する方法である。この原理に基づいて、母相であるInP結晶に対し、GaとAsの組成を変えたInxGayAs (x=0.56, 0.47, 0.38, 0.25)結晶をエピタキシャル成長した超格子構造を用いることで、この手法で得られる歪み分布の空間的な分解能や測定精度を評価した。 InxGayAs (x=0.56, 0.47, 0.38, 0.25)結晶の格子間隔は、InP結晶と比較して-0.8, 0, 0.8, 2%伸縮している。x=0.47の場合、InxGayAs 結晶の格子間隔は、InP結晶と同じであり、歪みがないことが予想される。 実際には、InP結晶に挟まれたInxGayAs 結晶膜内に成長方向に沿った歪み分布を約0.2%の精度で見出した。この分布は、成長時におけるInP結晶とInxGayAs 結晶の界面に生じた緩やかな組成変化によって説明できた。以上の結果から、開発した手法によって、1nm程度の空間分解能でおよそ0.2%の歪みを計測できることがわかった。
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