研究課題/領域番号 |
19K22168
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野田 泰斗 京都大学, 理学研究科, 助教 (00631384)
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研究分担者 |
根岸 雄一 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 教授 (20332182)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 金属元素マジックサイズクラスター / 固体高分解能NMR / 構造解析 / 電子状態 / 109Ag NMR / 構造ゆらぎ |
研究実績の概要 |
構成原子数が精密に揃ったマジックサイズクラスターはバルクとは全く異なる原子配置と電子構造を持ち、特異な安定性や触媒・光学特性などを有することが実験的・理論的研究により明らかにされつつある。しかし、サイト毎の情報を実験的に得るのは極めて難しく、サイト毎の情報が得られる手法が強く望まれている。 本研究では、分析の新しい目として、金属元素マジックサイズクラスター群に高分解能NMRを導入することを目的とし、金属元素マジックサイズクラスターでNMR信号が観測可能であることを示し、さらに帰属可能であることを示すことで、固体高分解能NMRが適用可能であることを実証していく。 最も対称性が高く信号が単純になるであろうAg25(SPhMe2)18に着目し、今年度はより純度と結晶性の高い試料の109Ag NMRおよび1H、13C NMRを試料が変質しない0℃以下の低温で測定した。その結果、予想に反しスペクトルが昨年度の純度と結晶性が高くない試料より強度も分解能も悪くなった。詳細に温度を変えて測定していったところ、0℃に近くなると強度と分解能はやや改善された。このことは、高分解能固体NMRに必須な高速試料回転と干渉する何かしらの構造ゆらぎがあることを示唆する。 そこで試料管に密閉された固体状態では試料は室温でもそれほど劣化しないと考え、室温で高分解能NMRを測定した。更に原料の銀錯体高分子のスペクトルと比較した。その結果、昨年度は不純物と考えていた信号が実は銀クラスター頂点を占める銀の信号であることが判明した。 この結果を裏付けるためにスーパーコンピューターを用いて電子状態をDFT法により計算し、得られたNMRの信号位置を検証したところ、傾向はDFT法で計算された値と一致した。そのため、固体高分解能NMRで金属マジックサイズクラスターの信号が観測可能であり、かつ、帰属可能であると結論づけることができた。
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