本研究は、非接触な温度計測である赤外線イメージング法を使って、分子性物質の微小単結晶の総合的な熱測定開発を行うことを目的としている。極微サイズの結晶を用いた熱的な測定を行うためのダウンサイズ化を行い多くの分子性固体に対する熱計測の可能性を開拓することを目的としている。 令和4年度は、前年度に作成した緩和型熱量計、断熱型熱量計に使用する白金抵抗素子を用いた極微試料ステージと極細クロメル線(外径13μm)部位の温度分布の特徴を明らかにするために、赤外線イメージングカメラの高い空間分解能(6μm)を利用し、詳細な温度マッピング計測を行った。緩和型、断熱型熱容量測定装置で、セルの平均的な温度変化プロファイル計測中での試料部での温度分布について詳細な解析を行った。その結果、試料ステージの中に数mK程度の分布が生じることが明らかになり熱の流れがステージ内でも生じている事が明らかになっている。サファイア板を10μm以下に研磨しステージ上に着けることで温度差がほぼ無くなることが明らかになった。一方で、極細ワーヤーの中の温度分布は小さい。これは、試料ステージ近傍で急速な温度変化が生じているためである。ワイヤー部の熱容量は計測時に考えなくても緩和法計測の絶対値が良くあっている事は、ここから理解できる。一方で輻射の効果については、緩和法の計測手法から断熱法と異なり大きく絶対値に影響を与えていない点も温度プロファイルの空間、時間分布から明らかになった。一方で、定常法による熱伝導等の計測は熱伝導の良いサファイヤや金属の計測の場合には温度分布が一定の勾配にならないため、その絶対値の決定には多くな問題があることが指摘される。イメージング計測と定常法の併用し温度勾配の評価を行うことが必要であることがわっかた。これらの問題を検討しながら微小量試料の熱容量、熱伝導測定の装置の作成を進める事が出来た。
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