研究課題/領域番号 |
19K22172
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
鐘本 勝一 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (40336756)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | スピン流 / 二重共鳴 / 逆スピンホール効果 |
研究実績の概要 |
本研究では 、強磁性共鳴(FMR)によるスピンポンピングから生成したスピン流の伝播を分析するための二重共鳴型ポンププローブ技術を開発し、スピン流伝搬の物理を明らかにすることを目的とする。その構築する計測系は、従来からあるXバンドマイクロ波キャビティを利用したマイクロ波増幅システムと、アンテナを利用したマイクロ波励起システムを組み合わせるものである。その実験系が構築されると、キャビティによるマイクロ波を強磁性電極の励起用に用い、アンテナからのマイクロ波をマイクロ波のプローブ用に用いることができ、励起により発生したスピン流の伝達を直接評価する計測系が構築できる。その場合、Xバンドマイクロ波キャビティは従来からのシステムを用いることができるため、計測系構築において心臓部となるのは、アンテナ型マイクロ波励起システムの構築である。本年度は、そのシステム構築に重点を置いた。マイクロ波の波長が可変で出力できる新規購入したシンセサイザの出力を、新規購入したマイクロ波アンプとつなげ、励起用のマイクロ波の系を構築した。その励起マイクロ波をアンテナとつなげ、試料に効果的に照射されるかを調べた。その調査には、そのアンテナプローブを用いて、Xバンドマイクロ波キャビティに観測される逆スピンホール効果の信号と同様な信号が発生するかを調べることが最も直接的と考え、その実験を実施した結果、実際に、アンテナプローブからの信号の観測に成功した。これはアンテナプローブ系が計測に使えることの実証となり、本計測系の実現に現実味を与えるものとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回目的とする二重共鳴計測系の構築において心臓部となるのは、アンテナ型マイクロ波励起システムの構築であるが、前述の通り、この計測系を構築し、実際に、励起システムとして使えることを確認できた。また、前述事項以外に、Xバンドキャビティから発生するマイクロ波とアンテナ型システムから発生するマイクロ波が干渉することも懸念事項の一つではあったが、その影響もほとんどないことも確認された。以上の理由から、本研究の状況としては順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的とするのは 、強磁性共鳴(FMR)によるスピンポンピングから生成したスピン流の伝播を分析するための二重共鳴型ポンププローブ技術を開発し、スピン流伝搬の物理を明らかにすることである。その準備段階で、アンテナ型励起システムからマイクロ波が増幅されて出力され、計測に使えることが確認できた。そのため、実際に最適な試料系を準備し、二重共鳴信号が実際に得られるかを調べることが本年度の最終目標である。そのために、試料作成系を整備し、標準的な試料系を構築する。特に、大きなインパクトを与えるためには、これまでよく調べられてきた試料系を準備することを考えている。パーマロイと白金系に鉄などをつけ、三層構造として、一方の強磁性層の励起でもう一方の強磁性層の変化が観測されるかを調べる実験をメインに行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、新規な計測系を作成するが、研究協力者と共同で装置開発を行っている。しかしながら、コロナの影響で、実験に取り組む時間が大幅に制限されたことに加え、遠方に位置している研究協力者が出張で来学する機会が大幅に減ってしまった。そのため、研究計画が遅れることになり、無理をせず、次年度に予算を持ち越し、計画を進めることになった。
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