研究課題/領域番号 |
19K22175
|
研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
平本 昌宏 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 教授 (20208854)
|
研究分担者 |
伊澤 誠一郎 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 助教 (60779809)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
|
キーワード | 有機太陽電池 / ドーピング有機単結晶 / 長距離励起子拡散 / ルブレン単結晶 / pnホモ接合 / 内蔵電界集中 / 単一有機半導体 / 活性化エネルギー |
研究実績の概要 |
本研究では、ドーピング有機単結晶ウェハーを用いた新原理太陽電池を作製し、バルクヘテロ接合がなくても実用的な効率が得られることを実証する。本年度は、p型ホモエピドーピング層を有するルブレン単結晶基板上に、pnホモ接合を形成した光起電力セルの試作を行った。1 mmというマクロな大きさのpn接合全面積からホールが収集でき、p型ドーピング単結晶層が、ホール収集電極として動作していることを実証できた。また、光電流作用スペクトルの解析から得られた、ルブレン単結晶基板の励起子拡散距離は、2.7 マイクロメーターに達し、励起子収集効率は47%が得られた。この結果は、ルブレン単結晶は、励起子の相当部分をpn接合に収集できるため、ブレンド接合が不必要になることを意味している。 また、pnホモ接合有機太陽電池を作製し、単一有機半導体のみを用いて、分子レベル内蔵電界集中によって励起子を解離させ、高効率の光電流発生を目指した。ジインデノペリレン(DIP)及びテトラフェニルジベンゾジインデノペリレン(DBP) を用いて作成したpnホモ接合デバイスにおいて、ドーピング濃度の上昇に伴い、短絡電流密度(JSC)が上昇した。まず結晶性が高いDIPはDBPより高い内部量収率を示し、JSCの光強度依存性から、二分子再結合がDIPよりDBPの方が大きいことが分かった。また、JSCの温度依存性から、ドーピング濃度が上がることで、分子レベル内蔵電界集中が起こり、電荷分離のための活性化エネルギーが減少することが分かった。本研究によって、単一有機半導体のみによるpnホモ接合有機太陽電池の動作原理がわかり、有機単結晶においても同様の結果が得られることが期待でき、ドーピング有機単結晶ウェハーを用いた新原理太陽電池の作製に道を開く結果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
長距離励起子拡散を利用した有機単結晶太陽電池の動作を実証でき、pnホモ接合における励起子解離効率を向上できれば、大幅に効率向上できる目処がついた。また、単一有機半導体のみによるpnホモ接合有機太陽電池の動作原理がわかり、今後、有機単結晶においても同様の結果が得られることが期待できる。以上のように、ドーピング有機単結晶ウェハーを用いた新原理太陽電池の作製に道を開く、当初の研究目的を十分達成したため。
|
今後の研究の推進方策 |
有機単結晶バルク全体にドーピングする技術を確立し、有機単結晶基板作製技術を確立する。具体的には、電子バンド伝導性のルブレン誘導体単結晶に、ドナーとして働くナトリウムを拡散法によってドーピングする方法を行う。ドーピング濃度、移動度を、ホール効果測定によって正確に評価する。ドナードーピングによるキャリア濃度とキャリア移動度のホール効果測定は、これまでに例がなく、基礎科学的に大きな意味を持つ。電子とホールの両方に、バンド伝導性を示す新規有機半導体単結晶を用いて、電子、ホール両方のホール効果測定を行う。両極性バンド伝導有機半導体は、これまでに例がなく、これも基礎科学的に大きな意味を持つ。両極性バンド伝導性有機単結晶を用いて、pnホモ接合を作製し、高効率の励起子解離による光電流発生を行い、長距離励起子拡散距離を利用した高い励起子収集効率を行い、バルク全体にドーピングした有機単結晶基板を用いて高効率のキャリア収集を行うことで、ドーピング有機単結晶ウェハーを用いた新原理太陽電池が実用レベルの効率を示すことを実証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
成果の論文執筆を優先し、計上していた国際学会参加を取りやめたため。また、予定していた真空部品の購入なしに研究を遂行できたため。次年度は、研究推進のための人件費として使用予定。
|