本研究では、遷移金属を用いない条件においてアスタチン211を医薬骨格へと導入する新しい合成法の開発に成功した。求核的なアスタチンアニオン種を利用し、アリールヨードニウムイリドとの反応が効率よく進行し、さまざまな官能基を有する分子、ヘテロ環化合物に対してアスタチン211が高い放射化学収率にて進行した。本研究で開発した手法は、従来法でも使用されてきた有毒な有機スズ試薬を用いる必要がなく、制御が困難な求電子的なアスタチン211カチオン種の使用も回避することができる。アスタチン211の実用的な標識法として価値が高く、がんのアルファ線放射各種により治療法の開発へとつながる萌芽的成果である。
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