現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請者らは,共役鎖を高度に三次元的に被覆することにより,鎖間のホッピング伝導を排除し,鎖内のみの電荷輸送経路を構築することで,キャリア種の長寿命化や高い電荷移動度を達成すると共に,規則正しい共役鎖の分断により,ホッピング伝導の上限値に迫る電荷移動度を有するジグザグ型共役分子ワイヤの合成に成功した。しかしながら,無機半導体に匹敵する電荷移動度の達成には,電荷輸送機構をホッピング伝導ではなく,より高速なバンド伝導へと導くことが必須あり,そのためには共役軸のコンフィグレーションエントロピー抑制が不可欠であると結論づけた。この様な経緯により,本研究では申請者の超分子化学・合成化学分野の知見・経験を融合させ,共役鎖を引っ張る・固める・広げる・束ねるという斬新な構造設計を考案し,熱的ゆらぎを制御することで,無機半導体材料を凌駕する有機系半導体材料の開発に挑戦した。その結果,既に,①引っ張るに関して,前駆体となるオリゴロタキサン分子の合成に成功し[Chem. Eur. J., 2020, 26, 3385], ②固めるについて,配位結合による含金属分子ワイヤの合成に成功している[Nat. Commun. 2020, 11, 408]。また,③広げるに関して,前駆体となる「王の字」分子の合成に成功し[J. Org. Chem., 2015, 80, 8874], ④束ねるについて,そのモチーフとなるポルフィリンチューブの合成に成功した[Chem. Commun. 2019, 55, 6755]。
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