研究実績の概要 |
本研究では、可視光照射条件下、触媒量のチタンあるいはジルコニウムアルコキシドを用いるredox-neutralなラジカル種の発生法を確立し、これを利用した効率的な炭素骨格構築法の開発を目的として研究を行っている。本研究を開始する時点での知見として、基質としてジフェニルメタノール存在下でテトライソプロポキシチタン(Ti(Oi-Pr)4)にトルエン中で300~450 nmの光を照射すると、1,1,2,2-テトラフェニルエタンおよび1,1,2-トリフェニルエタンが得られることを見いだしていた。この結果を踏まえ、Ti(Oi-Pr)4に光照射するとTi-O結合のホモリティックな開裂が起こり、イソプロポキシラジカルと三価のチタンTi(Oi-Pr)3が発生するという仮説のもと、三価チタン種を活性種とする触媒的な還元反応を実現することを主目的に研究を行った。まず、前述の反応に関しさまざまな検討を行った結果、10 mol%のTi(Oi-Pr)4にシクロオクタン中1等量の酢酸を加え110 ℃でLEDを用いて365 nmの光照射を行うと1,1,2,2-テトラフェニルエタンが46%と触媒量以上得られることを見出した。酢酸を添加しないとその効率は大幅に低下する。また、100 ℃以上の加熱も必要であった。さらに溶媒であるトルエンとのカップリング体の生成も確認されたので、水素源の添加について検討を行った結果、2-プロパノールを添加することでその生成が抑制され、目的の二量化体を70%程度の収率で得ることに成功した。この反応では光照射により三価のチタンが生成し、これがジフェニルメタノールの炭素-酸素結合を一電子還元により切断しジフェニルメチルラジカルを発生させ二量化体を与えるとともに、四価のヒドロキソチタンが生成し、2-プロパノールとの反応により触媒が再生しているものと考えている。
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