本研究ではホウ素を骨格内部に含んだボウル型曲面分子、ボラバッキーボウルの合成法の開発を目指して研究を進めた。2021年度は、前年度まで検討したterphenylからの合成法をさらに改良し、ホウ素を含む縮環π共役分子の合成を試みた。前年度で課題であった、ハロゲン基の導入法についてまず検討を行った。その結果、位置選択性は低いものの、電子供与基の導入によりハロゲン基を導入できることを見出した。特にアミノ基を導入することで選択的かつ効率的に前駆体を合成できた。これをもとにホウ素導入の検討を行ったところ、反応は全く進行しないことがわかった。戦略を変更し、芳香族性による安定化をドライビングフォースにし、イミンを形成する新たな合成経路を考案し前駆体の合成を行ったところ、反応は進んだものの単離できなかった。本研究期間では合成には至らなかったものの、変換の容易な臭素基を含む前駆体の合成ルートはほぼ確立できたので今後さらに研究を進めていく予定である。 この合成とは別に曲面にホウ素を導入したπ共役分子の合成を行った。アントラセン二量体を合成し、ホウ素で架橋した分子の合成を検討した。前駆体のアントラセン二量体の合成に成功し、ねじれ構造をもつにも関わらず架橋部位において軌道が効果的に連結し、吸収スペクトルが長波長シフトすることを見出した。この前駆体からさらに反応を行うことで目的のホウ素導入曲面π共役分子の合成を行っていきたい。
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