研究課題
令和2年度は全期間を通じてコロナ感染防止による海外への渡航制限のため、ストラスブール大学で実施予定であった実験及び測定は、中止せざるを得なくなり、本務研究室内での実験においても、令和2年3月から5月にかけて一時的に研究室への立ち入りが規制されたことから、以下の実験項目に絞って研究を実施した。1.膜結合タンパク質のナノディスク化とその機能評価 昨年度に引き続き、ナノディスク化した光駆動塩素イオン(Cl-)ポンプタンパク質であるハロロドプシン(HR)の機能評価を行った。これまでに確立した手法を用いて作成したナノディスク化HRの光反応サイクルを、紫外可視吸収スペクトル、円二色性スペクトル、過渡的吸収分光法など多様な分光学的手法で得られた結果を解析したところ、効率的な光駆動ポンプ機能発現のためには、1)細胞内の膜中に存在する色素であるバクテリオルベリンとHR間の相互作用、2)膜上の負電荷とHRとの相互作用、3)塩素イオン結合、解離時における三量体HRの構造変化、4)三量体を構成するHR間の相互作用、5)三量体HR間の分子間相互作用が重要であることが明らかとなった。これらの結果は米国生物物理学会誌のBiophysical Journalに掲載された。2.シトクロム酸化酵素の電極表面における還元反応の追跡 これまでストラスブール大学においてシトクロム酸化酵素を電極表面に固定化し、その固定化酵素による酸素分子の還元反応をcyclic voltammetryで追跡したが、そのデータを再解析したところ、コレラ菌由来のシトクロム酸化酵素は電極表面に集積させ固定化することが可能で、電極表面での還元・酸化反応が進行することが示された。一方、ウシ由来の高等動物のシトクロムc酸化酵素では不可逆な反応成分が多く、これは電極への固定化、集積化の際に蛋白質の変性等が誘起されるためであると考えられた。
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Biophys. J.
巻: 118 ページ: 2853-2865
10.1016/j.bpj.2020.04.021
https://wwwchem.sci.hokudai.ac.jp/~stchem/pickup/