研究課題/領域番号 |
19K22194
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 雄介 東北大学, 理学研究科, 助教 (90583039)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | エクソソーム / 蛍光プローブ / 脂質パッキング欠損 / マーカーフリー解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は細胞間コミュニケーションツールとして多様な生命現象に関与する細胞外小胞(エクソソーム)を検出・定量するための新規な分析手法を開発することである。現在タンパク質に対する抗体を用いたイムノアッセイを流用することでその解析が行われているが、多様なタンパク質プロファイルを持つエクソソームを標的とした場合その有用性は限定的である。本研究ではエクソソームが持つ共通の性質である高曲率性膜に着目し、その表面に特異的に存在する脂質パッキング欠損に結合する両親媒性αヘリックスペプチドをベースとした蛍光プローブを新たに創出し、様々なエクソソーム種類に適用しうる分析法の開発を目指す。 本年度はアポリポプロテインA-IのC末端領域を脂質パッキング欠損認識部位として用いて、そのN末端に疎水場感受性色素であるNBDを連結した蛍光プローブを合成し、人工ベシクルに対する基礎特性を評価した。その結果、ベシクルのサイズ、すなわち曲率に応じた発蛍光応答が見られた。CD測定および種々の脂質組成からなるベシクルを用いた検討から、本プローブがαヘリックス構造形成を伴い脂質パッキング欠損を認識し、これに伴いNBD部位が疎水場であるベシクル表面に近接することで蛍光応答を示すことが示唆された。また蛍光色素の特性が与えるプローブ機能の影響を検討した結果、分子としての疎水性が高く膜内部に分配されるNile Redを蛍光応答部位として用いた場合に、ベシクルに対する結合能・蛍光応答能が大きく強化されることを見出した。Nile Redを導入したプローブを様々な細胞から単離したエクソソーム解析に適用した結果、いずれの種類のエクソソームにも10^5個/μL程度の検出限界を示し、膜タンパク質のプロファイルに依存しない解析法としての有用性を示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存のイムノアッセイに匹敵する検出感度を示す蛍光プローブ設計方針を見出し、マーカーフリー解析を実現しうる高い可能性を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
本プローブ設計の一般性を検討し、さらならプローブ機能の向上を目的として、他の両親媒性αヘリックスペプチド配列やアミノ酸変異による基礎特性の変化を体系的に評価する。また血液や体液に含まれるエクソソームなど実サンプル解析を指向してより高感度な検出を可能にする蛍光色素およびプローブ修飾によるセンサー化へと展開していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
蛍光プローブ開発に必要なペプチドおよび蛍光色素部位の合成に時間がかかり、当初予定していた解析対象となる細胞由来エクソソームおよびコントロールとなるマイクロベシクルへの適用が限定的になってしまったため。これに関して、次年度では、本年度合成した蛍光プローブを適用する細胞外小胞の種類を拡大し、分析法としての汎用性を検証する予定である。
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