研究課題/領域番号 |
19K22200
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堀毛 悟史 京都大学, 高等研究院, 准教授 (70552652)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 金属―有機構造体 / ガラス / 機械特性 |
研究実績の概要 |
前年度得られたAg+-ニトリル系のMOFガラスについて、ホットプレスによるガラスの成形加工プロセスをより好適化したところ、ガラス転移点より少し高い温度での処理により、cmオーダーのモノリスを高い透明度(80~90%)で得ることに成功した。SEM等によりほぼ完全に粒界がないガラスを得たため、動的粘弾性測定へと展開し、硬度やヤング率ともに、いわゆる酸化物ガラスと有機高分子ガラスの中間の値であることを確認した。また半導体特性をもつMOFガラスへ展開するため、ボールミルの手法をFe2+/Fe3+の混合原子価からなるプルシアンブルー誘導体(PBA)へと適用し、条件探索を進めた。結果、PBAのガラス化にも成功した。このPBAガラスの電気伝導性を評価すると、10^-4 S/cm(室温)と比較的良好な伝導度を示すことがわかった。温度を上げることで伝導度は向上し、半導体的振る舞いを示すことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な「曲げ応答性」を有するMOFガラスのライブラリを拡張とともに、プルシアンブルー誘導体(PBA)からなる半導体MOFガラスの合成に成功した。伝導度は10^-4 S/cm(室温)と良好な値を示しており、ガラスモノリスの作成も可能な系として有望である。初年度に進めた動的粘弾性測定による当該半導体MOFガラスの機械特性評価を高い信頼性で進められるとともに、PBAは様々な遷移金属イオンで置換、特性変化が可能であることから、半導体特性および機械特性ともに系統的に制御できる系を見出すことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に見出したプルシアンブルー誘導体(PBA)ガラスは半導体特性とガラス化を示し、本研究において理想的な系であることから、これに注力する。構成する金属イオンの組み合わせをFe/Fe以外にFe/Co、Fe/Cuなどへ展開することで伝導度および機械特性の両方をチューニングできる。さらに組成中に存在するカリウムカチオンや結晶水の量(=欠損量)によっても機械特性を制御できるため、それらパラメータを系統的に振りながら、柔らかいガラスの合成条件を絞ってゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に実施予定であった各種分光測定および試料調製において、いくつかの理由により遅れを生じたため、当該助成金が生じた。これら実験を翌年度に実施する予定である。
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