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2020 年度 実施状況報告書

超空間分解顕微分光を指向した二波長発光性希土類錯体の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K22207
研究機関東京理科大学

研究代表者

湯浅 順平  東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 准教授 (00508054)

研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2022-03-31
キーワード温度センサ / 発光 / 希土類 / 対称性 / 錯体 / 光化学 / 配位化合物 / 光機能
研究実績の概要

本研究の目的はナノスケールの熱揺らぎを検出することのできる超空間分解能の発光温度センシング技術を開発することでである。従来の熱力学を見直し、新しい学理の構築の流れを生む芽生え期の研究として、以挑戦的課題を行うことである。当該年度においては前述の目的を達成するための高感度温度センサ(化学センサ)の開発と、そのライブラリーの充実、およびその高感度温度センサとしての実証実験をおこなった。具体的には、高い配位数をもつ希土類イオンを中心金属として選択し、この希土類イオンに対して非対称性を導入した新規希土類錯体の合成をおこなった。また、参照実験に使用する希土類錯体として高い対称性をもつ対称型配位子のみを有する希土類錯体についても合成をおこなった。また、合成した新規希土類錯体のX線結晶構造解析による絶対配置の決定を試みた。研究の過程において、非対称性を導入した新規希土類錯体は、高い対称性をもつ対称型希土類錯体に比べて結晶性が低いということがわかった。一方で、各種結晶化溶媒を系統的に検討することによって概ね、合成した非対称型希土類錯体の結晶構造解析に成功した。X線結晶構造解析から決定した錯体の絶対配置から、新規に合成した非対称型希土類錯体は対称型希土類錯体に比べて錯体構造全体に極性を保持する傾向が見出された。また発光スペクトル解析を基盤とする溶液構造推定と、前述の結晶構造とを比較すると、使用する溶媒の極性に応じて結晶構造が溶液中においては異なる構造へと転移することが示唆された。そこで中程度の極性をもつ溶媒に非対称型希土類錯体を溶解させ、温度変化によって発光スペクトル形状がどの程度変化するかを調べた。その結果、希土類のf-f遷移に由来する発光の微細構造に変化が観測され、本研究で合成した非対称型希土類錯体が高感度温度センサとして機能することがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

前述のように、本研究の目的はナノスケールの熱揺らぎを検出することのできる超空間分解能の発光温度センシング技術を開発することでである。従来の熱力学を見直し、新しい学理の構築の流れを生む芽生え期の研究として、挑戦的課題を行うことである。当該年度においては、この目的を達成するための高感度温度センサ(化学センサ)として、希土類イオンに対して非対称性を導入した新規希土類錯体の合成をおこなった。希土類イオンは遷移金属錯体に比べて高い配位数をもつち、また置換活性であるという錯体化学的な特徴がある。温度変化によるこの配位数の変化や、構造転移を想定し本研究においては中心金属として希土類イオン選択している。概要に記載したように、当該年度においては各種結晶化溶媒を系統的に検討することによって概ね、合成した非対称型希土類錯体の結晶構造解析に成功している。また、発光スペクトル解析を基盤とする溶液構造推定と、前述の結晶構造とを比較することで使用する溶媒の極性に応じて結晶構造が溶液中においては異なる構造へと転移することが示唆された。このような非対称型希土類錯体の構造転移は溶媒極性だけでなく、外部因子として温度変化を加えることによっても誘起されることが論理的に予測される。そこで中程度の極性をもつ溶媒に非対称型希土類錯体を溶解させ、温度変化によって発光スペクトル形状がどの程度変化するかを調べた。その結果、希土類のf-f遷移に由来する発光の微細構造に変化が観測され、本研究で合成した非対称型希土類錯体が高感度温度センサとして機能することがわかった。一方で、冒頭に記載した本研究の目的を達成するためには、本研究で開発した非対称型希土類錯体に水系溶媒への溶解度と安定性を与えることが必要であるが、この点に関して種々の要因でやや遅れが生じている。

今後の研究の推進方策

前述のように、本研究の目的はナノスケールの熱揺らぎを検出することのできる超空間分解能の発光温度センシング技術を開発することでである。従来の熱力学を見直し、新しい学理の構築の流れを生む芽生え期の研究として、挑戦的課題を行うことである。また、現在までの進捗状況で記載したように、本研究では非対称型希土類錯体の構造安定性を利用することで、この非対称型希土類錯体が有機系溶媒の高感度温度センサとして機能することを実証実験から明らかにしている。一方で、今後の課題として、本研究で開発した非対称型希土類錯体に水系溶媒への溶解度と安定性を与えることが必要であるが、この点に関して種々の要因でやや遅れが生じている。そこで今後の研究の推進方策としてはこの点に関して重点的な検討を行う。具体的には当該年度において開発した非対称型希土類錯体をマイクロ結晶化することで水系溶媒へ高分散させ、このマイクロ結晶が水系溶媒の発光温度センサとして機能するかを調べる。また、この方法がうまく機能しない場合においては、錯体設計の段階から、配位子に水系溶媒対する溶解度をもつ置換基を導入し水溶性の非対称型希土類錯体を新規に合成し、その温度センサとしての実証をおこなう予定である。

次年度使用額が生じた理由

概要に記載したように、当該年度においては各種結晶化溶媒を系統的に検討することによって概ね、合成した非対称型希土類錯体の結晶構造解析に成功している。また、発光スペクトル解析を基盤とする溶液構造推定と、前述の結晶構造とを比較することで使用する溶媒の極性に応じて結晶構造が溶液中においては異なる構造へと転移することが示唆された。このような非対称型希土類錯体の構造転移は溶媒極性だけでなく、外部因子として温度変化を加えることによっても誘起されることが論理的に予測される。そこで中程度の極性をもつ溶媒に非対称型希土類錯体を溶解させ、温度変化によって発光スペクトル形状がどの程度変化するかを調べた。その結果、希土類のf-f遷移に由来する発光の微細構造に変化が観測され、本研究で合成した非対称型希土類錯体が高感度温度センサとして機能することがわかった。一方で、冒頭に記載した本研究の目的を達成するためには、本研究で開発した非対称型希土類錯体に水系溶媒への溶解度と安定性を与えることが必要であるが、この点に関して、社会環境変化に伴い、想定していた実験系の研究時間実の確保が困難になり験計画に遅れが生じた。その結果、次年度使用額が生じた。使用計画としては主に、達成できなかった水溶性非対称型希土類錯体の合成にかかる費用として使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] Zinc Ion-Stabilized Charge-Transfer Interactions Drive Self- or Complementary Molecular Recognition2020

    • 著者名/発表者名
      Shuta Iseki, Kohei Nonomura, Sakura Kishida, Daiji Ogata, and Junpei Yuasa
    • 雑誌名

      Journal of the American Chemical Society

      巻: 142 ページ: 15842-15851

    • DOI

      10.1021/jacs.0c05940

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Remarkable self-sorting selectivity in covalently linked homochiral and heterochiral pairs driven by Pd2L4 helicate formation2020

    • 著者名/発表者名
      Daiji Ogata, Junpei Yuasa
    • 雑誌名

      Chemical Communications

      巻: 56 ページ: 8679-8682

    • DOI

      10.1039/D0CC03539D

    • 査読あり

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公開日: 2021-12-27  

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