研究課題/領域番号 |
19K22214
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田代 省平 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (80420230)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 多孔性配位高分子 / 高分子 / 大環状配位子 / ベンズイミダゾール / 細孔 |
研究実績の概要 |
有機高分子が機械的に相互貫入したトポロジカル結合高分子は、次世代を担う機能性有機高分子材料の有力候補の一つである。これらの高分子材料を精密かつ簡便に合成する新手法を確立することを目的として、二つの独立した三次元格子状細孔が相互貫入した多孔性配位高分子を新たに開発し、その細孔内に種々の化合物を精密配列させることにより、ジャングルジム型高分子が規則的に相互貫入した高秩序型相互侵入高分子網目を精密合成することを目指して研究を進めた。昨年度は、大環状配位子であるベンズイミダゾール[3]アレーンを配位子として用いることにより、三次元格子状細孔が相互貫入した多孔性配位高分子の合成・構造解析を行なった。 当該年度は、得られた多孔性配位高分子を用いて様々な化合物の精密分子配列について検討を行なった。その結果、多孔性配位高分子の非対称な細孔壁面において、様々な有機化合物が位置選択的に精密配列することを単結晶X線回折測定より明らかにした。例えば、種々の溶媒分子は細孔壁面および空孔内で自己集合することにより、特徴的なクラスター構造を形成した。また、多孔性配位高分子には二つの独立した三次元格子状細孔が鏡像異性体対として備わっていることから、光学活性分子をジアステレオ選択的に配列することもできた。さらに、細孔内に取り込む化合物の種類に応じて、多孔性配位高分子が柔軟に構造変形することも単結晶X線回折測定より示唆された。これらの結果から、本研究で開発した多孔性配位高分子は優れた分子配列場として機能するとともに、化学的環境に応じて変形する柔軟な多孔性構造を有することを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、二つの独立した三次元格子状細孔を鏡像異性体対として備えた特異な多孔性配位高分子を合成し、その非対称構造、精密分子配列能、および特徴的な構造柔軟性を明らかにしたことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、高分子合成の重合場として応用するとともに、今回明らかとなった優れた分子配列能や構造柔軟性を活かすことにより、様々な機能化を図ることを目指す。例えば、その分子配列能を活用して、種々の化合物を位置および立体選択的に配列化させることにより、結晶化しにくい化合物の結晶構造解析を行う結晶スポンジ法への応用が考えられる。また構造柔軟性を活用したソフトクリスタルとしての機能化や、柔軟性と発光特性などが高度に協同する高感度センサーなどへの応用を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、本補助事業の目的をより精緻に達成するための研究の実施により生じた。具体的には、本研究目的を達成するための重要な知見として、多孔性配位高分子の特徴的な分子配列能と構造柔軟性を明らかにした上で、研究成果を学会発表および論文投稿するために本補助事業期間を延長した。次年度使用額は、主に物品費や論文掲載にかかる費用(その他)として使用する予定である。
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