有機高分子が機械的に相互貫入したトポロジカル結合高分子は、次世代を担う機能性有機高分子材料の有力候補の一つである。これらの高分子材料を精密かつ簡便に合成する新手法を確立することを目的として、二つの独立した三次元格子状細孔が相互貫入した多孔性配位高分子を新たに開発し、その細孔内に種々の化合物を精密配列させることにより、ジャングルジム型高分子が規則的に相互貫入した高秩序型相互侵入高分子網目を精密合成することを目指して研究を進めた。昨年度までは、大環状化合物ベンズイミダゾール[3]アレーンを配位子として用いることにより、三次元格子状細孔が相互貫入した多孔性配位高分子の合成・ 構造解析を行ない、細孔内における分子配列構造について単結晶X線回折測定より明らかにしてきた。 当該年度は、細孔内で形成される分子配列構造を重合反応や物性制御に活用することを目指して検討を行った。その結果、結晶の不安定性のために良好な重合反応条件を見つけることは困難であったが、代わりに様々な蛍光色素分子を細孔内に効率的に包接することにより、その発光特性が変化することを見出した。加えて、ある溶媒条件においては結晶が異方的に膨張することにより、結晶細孔内に多様な分子認識サイトが形成されることが明らかとなった。具体的には、元々cubic系であった結晶が、ある一軸のみ伸長することにより、tetragonal系へと変形することが単結晶X線回折測定より示唆された。これらの結果から、本多孔性結晶の柔軟性と優れた分子認識能を組み合わせることにより、様々な物性を動的に制御できるユニークな結晶場となり得ることを示した。
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