研究課題/領域番号 |
19K22226
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藤田 淳一 筑波大学, 数理物質系, 教授 (10361320)
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研究分担者 |
伊藤 良一 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90700170)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | プラズモン / 3次元グラフェン / 2格子吸収 |
研究実績の概要 |
本研究では、照射光に共鳴するミクロスケールの周期構造を持つ3次元グラフェンを創出し、このグラフィティックなフォトニック結晶に照射した赤外・可視光に結合させてグラフェン表面上にプラズモンを発生させ、高効率な2光子吸収と高効率光触媒機能を実現させようとしている。このためには、照射光に共鳴する周期的1次構造を形成し、さらに3次元グラフェン表面には2次構造として、ナノサイズの細孔や突起を形成することで、プラズモンを集中させる。ナノホールのエッジで形成されるプラズモン共鳴場や、グラフェンナノ突起殻でのウィスパイング・ギャラリーモードを利用して効率よくプラズモン高輝度輻射場を形成して、高効率光触媒反応に応用しようとしている。 そこで、初年度は、3次元グラフェンの合成法を改良して、照射光に共鳴するフォトニック一次周期構造の形成を試みた。 銅箔上で塩化NiMo溶液を反応させて3次元グラフェンの雛形を形成するが、この銅箔に2次元の入射光共鳴周期構造を形成し、3次元グラフェンに対して、1次の長周期構造として転写する計画であった。ところが、この3次元グラフェンの雛形となるスポンジ状金属が極めて脆く、大面積化が非常に困難であることが判明した。また、個々の3次元グラフェン粒子も数十ミクロン程度と比較的サイズが小さいために、光吸収は全スペクトルで起こってしまい、特定領域でのプラズモン吸収スペクトルは観測されなかった。
そこで、研究方針を若干修正して、X線光学結晶として用いられる熱圧延グラファイトを用いて、長周期プラズモン吸収構造を表面に形成した2次元グラフェン構造からプラズモン集光を検証することとした。熱圧延グラフェン表面は極めて平坦性が高く、良好な2次元共鳴構造を形成できそうである。また、暫定的な光吸収スペクトルにも、共鳴吸収に由来すると思われるスペクトル構造を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一つには、3次元グラフェンが、予想以上にフラジルなことである。銅箔上で塩化NiMo溶液を反応させて3次元グラフェンの雛形を形成するが、このスポンジ状金属雛形が極めて脆く、大面積化が非常に困難であることが判明した。微粒子としての3次元グラフェンは、硬さも電子伝道も良好であるが、プラズモン共鳴を想定した場合には少なくともミリメートル以上の表面が必要となる。3次元グラフェンは、その微細構造自体にナノホールやナノ突起が形成されており、長周期の照射光共鳴構造ができれば、予定機能の実現は比較的容易であると思われた。 そこで、現在、X線光学結晶に用いられる熱圧延グラファイトを用いた共鳴周期構造での実験を開始している。熱圧延グラファイトは極めて平滑な表面を持ち、グレーティングの形成にも十分に耐える。この上に形成した長周期構造で共鳴吸収特性が観測されるとことまで検証できた。 しかし、同時に現時点で、コロナ感染対策として、ほぼ研究が中断状態となっている。早く研究再開が実現できることを期待したい。
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今後の研究の推進方策 |
熱圧延グラファイト表面でのプラズモン励起方法が実現の可能性有りと判断したので、この後、実際にどの程度の変換効率を持っているか、また熱圧延グラファイト表目にナノホールや突起を形成して、プラズモン集光が起こりうるかを実験的に検証していく。ナノホールはたとえばシリカナノ粒子を担持させてグラフェン合成を行うと、グラファイト自体は元の構造を保ちつつ、新しく形成されたグラフェン層にはナノホールや、ナノ突起の形成が可能であることが報告されている。本研究でも、3次元グラフェンよりは効率が落ちる可能性もあるが、まずは、実現可能な熱圧延グラファイト表面上での入射光共鳴構造の形成とプラズモン集光構造を実現させる方向で研究を推進していく。 ここで、プラズモン集光が検証できたら、当初予定通りに太陽光の近赤外域および可視域のスペクトル領域を用いた2光子吸収と、TiO2やWO3の高効率光触媒機能の活性を検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
3次元グラフェンによるフォトニック結晶合成プロセス関連費目に予算適応を予定していたが、研究方針を変更し、熱圧延グラファイトを用いたフォトニック結晶を用いることにした。このために、購入物品、ならびに関連装置部材への予算を次年度に繰り越すこととした。
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