研究課題
強誘電体の光起電力効果は、極性を再プログラミング可能な光センサーや高効率太陽電池への応用が期待されている。本研究では、浅い窒素2pバンドにより可視光吸収を示すペロブスカイト型酸窒化物に注目し、熱力学的に準安定な強誘電相である完全trans型アニオン配列をもつ薄膜の合成に挑戦する。そのための方法として、エピタキシャル歪みによるtrans型配列の安定化を(1)表面エネルギーを利用した自己組織化と(2)Aサイトカチオンへの孤立電子対の導入による正方晶歪みの増強に取り組んでいる。本年度の主な実績は以下の2点である。(1)窒化物/酸化物人工超格子によるアニオン配列制御に関して、前年度に示唆されたアニオンの層間拡散を抑制するために、反応性PLD法を用いたLnTiO2N薄膜の低温エピタキシャル成長を試みた。最適条件より低い成長温度ではRHEED振動が観測できず、高品質な窒化物/酸化物人工超格子の合成には供給原子の運動エネルギーを増大させるなどして表面拡散を促進する必要が明らかになった。(2)孤立電子対をもつAサイトイオンを含むペロブスカイト酸窒化物の候補であるSnTaO2N薄膜の合成に取り組んだ。NH3を用いたSn2Ta2O7へのトポタクティックな窒素導入(前年度実績)の反応条件を参考に、反応性PLD法で作製した非晶質SnTaO2N薄膜をNH3中でアニールして結晶化させる固相エピタキシー法を試みたが、目的物質であるペロブスカイト型SnTaO2Nは得られなかった。SEM-EDSによる組成分析の結果、結晶化よりも低温でSnおよびNが薄膜から脱離しており、適切な表面バリア層の堆積により改善できる可能性が示された。
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