研究課題/領域番号 |
19K22228
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
松崎 功佑 東京工業大学, 元素戦略研究センター, 特任助教 (40571500)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 窒化物半導体 / 両極性ドーピング |
研究実績の概要 |
InGaAlNに代表される窒化物半導体は、組成制御(バンドギャップ: 0.65 ~ 3.4 eV)の観点より太陽光スペクトル全域をカバーする高性能太陽電池や三原色(青・緑・赤)LED発光素子が理論上期待されることから、p/n型制御可能な窒化物半導体の合成法確立が急務をなっている。本研究ではアンモニアガスと酸化性ガスを組み合わせた考案の直接窒化法により、より低温で窒素化学種を活性化させることで、高品質な窒化物半導体結晶を作製し、GaN以外の窒化物では難しかったp型(およびn型)半導体の作製を行う。また窒化物半導体InGaNの結晶成長問題を克服し最も合成困難なp型窒化インジウム(InN)の作製に挑戦する。 はじめに、p/n型制御可能な窒化銅半導体をNH3/O2混合ガスを用いて、銅金属薄膜から直接窒化させ、n型伝導を示す銅窒化物半導体の多結晶薄膜を作製した。電子濃度は10^16 cm-3まで抑制され、移動度は10cm2/Vsと高いことから多結晶体でも高品質な薄膜が得られることが分かった。またフッ素などのアクセプターを導入することでp型半導体の作製を確認した。したがって、純金属を原料とした本直接窒化法を用いて高移動度の窒化物半導体の作製が可能となった。 次に本窒化法をInN薄膜合成に適応した。酸化性気体である酸素 によりNH3を酸化(脱水素化)させことでN-H結合を解離し、生成される活性窒素種NHxを用いて、In金属薄膜から直接InN薄膜の作製を試みた。合成温度600℃において、NH3単体ではIn金属は窒化しなかったのに対して、NH3とO2混合ガスではInと反応しInNの作製できることがわかった。したがって、提案の窒化法はより低温でNH3を活性化できるため、高品質なInN結晶育成に有用な合成法であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では新しい窒化法の提案により残留欠陥のない高抵抗の高品質なInNを中心とするp/n型伝導を示す窒化物半導体の作製を最終目的とした。考案の窒化法では、高い窒素化学ポテンシャルの実現にNH3を用い、酸化剤の添加により反応の活性化を狙う。n型伝導を示す銅窒化物半導体の多結晶薄膜に対して、Fドーパントを用いてp型半導体の作製、また、本窒化法をInN薄膜合成に適応し、当初の予定通り、In金属から直接InN薄膜の成長が確認できたため、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はより酸化力の強いフッ素などの酸化剤を用いて、より高品質なInN結晶を作製する。次に置換ドーピングによるp型InN:Mg (n型InN:Si)薄膜を新しい製膜装置により作製することで、p/n型InN系窒化物半導体を実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に導入予定であった高品質薄膜製造装置に必要な仕様を決定するまでに時間を要したが、予備実験が完了したので次年度に導入する計画である。
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