研究実績の概要 |
ナノスケール無機物質(ナノ粒子)の構造変換により得られる新奇結晶相は、一段合成で得られるナノ粒子にはない興味深い結晶構造・物性をもつと期待される。特に、無機物質の異方結晶構造に基づく異方的機能の発現は、高性能・高効率材料創製の観点から極めて興味深い。本研究では、ナノコンポジット磁石開発時に不純物金属相の界面応力により偶発的に得られたP4/mmm空間群を基礎とした新奇FePd3規則化合金相(L10-FePd相とfcc-Pd相が交互積層した結晶相)の形成メカニズムを解明し、新奇規則化合金相が発現する軽元素吸蔵特性や磁気特性等の構造特異物性を評価するとともに、未踏規則化合金材料群の設計指針を提案することを目的とする。 本年度は、昨年度までに精密構造制御を行ったZ3-Fe(Pd,In)3ナノ粒子の新規物性開拓を行った。等方性L12-(Fe,In)Pd3ナノ粒子と異方性等方性Z3-Fe(Pd,In)3ナノ粒子の磁気特性を評価したところ、L12-(Fe,In)Pd3と比較し異方性Z3-Fe(Pd,In)3では保磁力が約15倍増加しており、構造異方性に起因する構造特異物性の発現が実証された。本成果は、Nature Communicationsに掲載された。また、Inの代わりにPdおよびFeと相溶可能なZnを用いると、FePdZn層とPd層が交互積層したP4/mmm空間群をもつ全く新しい異方性合金相が形成した。すなわち、元素間相溶性を考慮することにより、新たな未踏合金を合成することができることを実証した。
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