PCP骨格の熱振動・運動や分子ロータに関する研究は限られており、それらの機械的な噛み合い、熱振動・運動による気体分子の吸脱着などの基礎的な知見は皆無である。昨年度は、 電場を印可しながら分子回転の回転モードと速度を計測できる特殊NMRプローブを作製し、様々な多孔性材料に対して、スクリーニング測定を行った。 本年度は、その中でも有望な[Zn(pyrazine)2SiF6]n(SIFSIX3)を中心に、気体雰囲気下での高分解能固体NMR測定に取り組んだ。結果、数秒の時間スケールでSiF6と亜鉛イオンの配位の組み組み替えが起きていることが明らかとなった。 加えて、ガス雰囲気下でテラヘルツ分光法が可能な特殊試料セルの作製や、電場印可中のガス濃度検知を可能とする測定装置が完成した。それら装置のデモンストレーションとして、電場により結晶構造が変化することが示唆されている[Zn(Me-im)2]n (ZIF-8) を対象に、1kV/cmの電場を印可させながら二酸化炭素の吸脱着、および空気中で二酸化炭素貯蔵が可能か検証実験を行った。現在、電場による吸脱着や二酸化炭素貯蔵の制御に関する明確な結果は出ていないが、二酸化炭素の拡散に関する変化等は濃度センサーにより確認できている。今後は、多種多様の多孔性材料に対して、開発した複数の装置や測定方法を組み合わせることにより、電場による気体分子の拡散制御に挑戦していく。
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