研究課題/領域番号 |
19K22234
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長谷川 丈二 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特任准教授 (60726412)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | メソポーラス材料 / 相分離 / ハイドロガーネット / ペロブスカイト / スピネル |
研究実績の概要 |
熱分解誘起相分離挙動を調査する前駆体として、ハイドロガーネット系と方解石(カルサイト)系の2種類の物質群のうち、Sr3Fe2(OH)12とカルサイト型のMgCO3/CoCO3固溶体について検討を行った。それぞれの化合物について、水熱反応により比較的そろった粒子径を有する多面体粒子を作製することに成功した。 Sr3Fe2(OH)12を熱処理すると200-250 °Cで脱水を伴う熱分解反応が起こり、ペロブスカイト相SrFeO3-δとSrCO3(生成するSrOが炭酸塩化して生じたもの)へと相分離する。熱分解後の試料においても多面体形状は維持されていた。希酢酸水溶液によりSrCO3を除去したところ、SrFeO3-δ単相の多面体粒子が得られ、三次元的につながったメソ多孔構造が形成されている様子が確認された。したがって、この系においても熱分解誘起相分離によりメソ多孔材料を作製できることが分かった。メソ孔の生成により、多面体粒子の比表面積は約100 m2 g-1程度に増大していた。また、400 °Cで焼成した試料のうち、昇温速度を変化させて合成を行った結果、昇温速度が速い方が細孔の大きさが大きくなる傾向が見て取れた。 MgCO3/CoCO3固溶体を熱処理した場合には、400-500 °Cで脱炭酸を伴う熱分解反応が起こり、スピネルMgCo2O4とMgOへと相分離する。熱処理およびMgO相の除去後、メソ多孔性多面体粒子を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を着想した際に仮定したとおり、熱分解誘起相分離が起こる反応系において、Ca3Al2(OH)12ハイドロガーネット/マイエナイト以外にも、熱処理後に三次元的につながったメソ多孔構造が形成される挙動が確認できた。ハイドロガーネットのほか、炭酸塩前駆体でも同様の挙動が見て取れたことから、本手法は他のさまざまな化合物にも適用できる可能性が高くなった。さらに熱処理条件を変化させることでメソ孔径を変化させることができることも確認できている。したがって、本研究は当初の想定通り順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で取り扱った化合物以外にも様々な前駆体粒子を作製し、その熱分解誘起相分離挙動について調査する。また、炭酸塩系において、熱処理時のCO2分圧を変化させながら試料を作製し、得られる試料の細孔径への影響について調べる。加えて、作製したメソ多孔性セラミックス粒子の応用研究にも着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年11月の名古屋大学への異動に伴い、高速で昇温可能な熱処理装置へのアクセスが不自由となった。当該装置は、本研究課題の一部にとって非常に重要な役割を果たすものである。定価で考えると本研究費で購入することは不可能であるが、販売業者の事情により、2019年度末に限り販売額が本予算を下回ったため、急遽計画を変更し購入することとなった。その条件として、2019年度に契約、2020年度に納入というスケジュールがあったため、2019年度予算の大部分を占める熱処理装置購入費分が2020年度に繰り越されることとなった。 当初は4月初旬に納入予定であったが、新型コロナウイルスの影響で納品時期がさらに遅れている。
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