熱分解誘起相分離挙動を調査する前駆体として、ハイドロガーネット系と方解石(カルサイト)系の2種類の物質群のうち、水熱反応によりSr3Fe2(OH)12とMgCO3/CoCO3固溶体について、比較的そろった粒子径を有する多面体粒子を作製した。 Sr3Fe2(OH)12を熱処理すると脱水を伴う熱分解反応が起こることでSrFeO3-δとSrCO3)へと相分離し、SrCO3の選択除去により三次元的につながったメソ多孔構造を有するSrFeO3-δ多面体粒子の合成に成功した。したがって、この系においても熱分解誘起相分離によりメソ多孔材料を作製できることが分かった。一方、透過型電子顕微鏡観察の結果、熱分解誘起相分離により単結晶の多面体粒子から結晶方位が若干ずれた多結晶体へと変化することが分かった。先行研究のハイドロガーネット前駆体から作製したマイエナイトでは熱処理後も粒子内の結晶方位が揃ったメソクリスタルであったため、前駆体と熱処理後の試料の結晶構造の類似性が関係することが示唆された。また、減圧下の熱処理によりペロブスカイトSrFeO3-δからブラウンミレライト型Sr2Fe2O5へと変換し、その後空気中で熱処理することでペロブスカイト相に戻すことができることが分かった。このような酸素放出吸蔵能を持つ材料は、酸化触媒などへの応用可能性が考えられるため、現在、NOx酸化触媒としての性能評価を進めている。 MgCO3/CoCO3固溶体を熱処理した場合には、脱炭酸を伴う熱分解反応によりスピネルMgCo2O4とMgOへと相分離し、MgO相の選択除去を行うことでメソ多孔性MgCo2O4多面体粒子を得ることに成功した。また、焼成温度を変化させることにより、メソ孔径を制御可能であることを見出した。今後、細孔特性のさらなる制御を検討するとともに、電池電極や触媒としての応用研究へと展開していく予定である。
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