研究課題/領域番号 |
19K22239
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
折笠 有基 立命館大学, 生命科学部, 准教授 (20589733)
|
研究分担者 |
中村 崇司 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (20643232)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
|
キーワード | 二次電池 / 全固体電池 / フッ化物 / 材料設計 |
研究実績の概要 |
リチウムイオン電池の理論性能を大きく超える新たな二次電池の候補として全固体フッ化物イオン電池がある。全固体フッ化物イオン電池を実用的に動作させるためには、高いフッ化物イオン伝導率と広い電位窓を有する固体電解質の開発が重要である。現状では、イオン伝導度が高く、安定なフッ化物としてタイソナイト型構造の希土類フッ化物が調べられており、アルカリ土類金属フッ化物をドープすることにより、フッ化物イオンが移動するための欠陥を生成し、イオン伝導度を高めることができる。近年ではこれらの固体電解質を用いた充放電反応が報告されているものの、作動温度や入出力特性に依然として大きな課題があり、さらなるイオン伝導率の向上が必須である。本研究では、単一のアニオンを有するフッ化物から、複数種のアニオンを有する複合アニオン化合物へ材料探索の領域を広げることで、将来のフッ化物イオン伝導体設計の領域拡張をはかった。 高イオン伝導に要求される因子として格子内に分極しやすいイオンが存在することが挙げられる。これはイオンが移動する経路に沿って生ずる異なる環境に対応して、イオンの電子分布を調節できるからである。そこで、本研究ではフッ化物イオンのサイトに、より分極しやすいイオンである硫化物イオンを置換した。求めたイオン伝導度からフッ化物イオン伝導の活性化エネルギーを算出したところ、結晶構造によって、硫化物イオンの置換効果が発現するケースとみられないケースが明らかになった。これはフッ化物イオンの伝導パスが置換された硫化物イオンによって影響を受けていることを示すものである。本研究では、これまで単一のアニオン化合物であった、フッ化物イオン伝導体設計領域を、複合アニオン化合物へ展開し、その材料の潜在性を示すことに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた結晶構造の数を超える材料の合成に成功しており、数多くの結晶構造を検証しているため。
|
今後の研究の推進方策 |
希土類とアニオン種の組成に着目した材料設計を進める。前年度に策定された材料設計に基づき、材料合成を行う。合成した試料は同様に、キャラクタリゼーションと導電率測定、X線吸収分光測定を行い、前年度の結果と合わせて、フッ化物イオン伝導の高速化をはかる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの蔓延により、3月期に実施予定の研究計画を見直したため。物品費として、無機試薬の購入にあて、1203116円、その他として、外注分析を加え380000円とする。
|