研究課題/領域番号 |
19K22240
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
坂口 和靖 北海道大学, 理学研究院, 教授 (00315053)
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研究分担者 |
鎌田 瑠泉 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (40750881)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | ポリペプチド / ストレス / 翻訳 |
研究実績の概要 |
生命科学・分子生物学の『セントラルドグマ』は、原核生物から真核生物にいたる基本的な原理として扱われており、生命現象を主として担うポリペプチド(タンパク質)は、遺伝情報を有するDNAから転写されたmRNAにコードされ、mRNAからの翻訳によって生合成される。リボソームを構成する主要要素であるリボソームRNA(rRNA)は、タンパク質をコードしないノンコーディングRNAとされている。 本研究では、rRNAが遺伝子情報を内在的にコードし、生存危機回避などの特殊な状況においてポリペプチドに翻訳されるという仮説の下、原核生物が生存危機環境における自己防衛のために、生命維持に必須で膨大に発現しているrRNA配列由来のポリペプチド(r-Peptide)の同定と機能解明を目指す。 本年度は、インフォマティクス解析より作成した推定r-Peptideデータベースより抽出した配列のうちr-Pep2と名付けたペプチドが大腸菌における特異的な抗抗生剤活性の機構解明のための実験を実施した。その結果、r-Pep2の抗抗生剤活性がアミノグリコシド系抗生物質に特異的であることを明らかとした。また、r-Pep2がアミノグリコシド系抗生物質添加時に大腸菌の封入体形成を促進するという興味深い結果を得た。このため、UVによるクロスリンク能を有するr-Pep2のビオチン化アナローグをデザインし合成した。 本研究は、大腸菌の危機状態対応への進化の解明として大きな意味を持つばかりでなく、医療に対しても極めて重要な意義を持つ。近年、抗生物質多剤耐性菌の発生が医学的・社会的な非常に大きな問題となっている。本研究により、原核生物の危機回避メカニズムが解明され、この新規メカニズムに基づいた、全く新しいタイプの抗生物質の開発へと展開されることが強く期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、興味深い新現象を見出した。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響のため、研究補助者が実験に従事できず研究課題の目標としたところまでには至らなかった。このため研究の期間延長を行った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、極めて興味深い活性を有するr-Pep2の作用機序の解明を進める。さらに、危機ストレス条件を決定し、LC-MS/MSによる大腸菌r-Peptide同定を実施する。さらに、同定されたr-Peptideの機能およびその作用機構の解明を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響のため、研究の期間延長を行った。未使用分は延長期間においてr-Peptideの機構解明と同定を行うための物品費、旅費、共同設備使用費等として執行する予定である。
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