研究課題/領域番号 |
19K22241
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
水上 進 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30420433)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 蛋白質ラベル化技術 / リン酸化酵素 / 光薬理学 |
研究実績の概要 |
生体内での酵素の機能やその複雑な分子ネットワークを解明する手法として、特定の酵素の活性を阻害剤などによって修飾し、それに応答した生体反応を調べる手法が古くから用いられている。一方、近年の光解析技術を用いて、もし特定の酵素活性を光刺激によって特定の場所で特定の時間に瞬時に変調させ、その細胞応答をリアルタイムに観察することができれば、標的酵素の生理的な役割に関して時空間的な情報が得られることから、これまで得られなかった機能を明らかにできると期待できる。本研究では、研究代表者らが独自に開発している光可逆的蛋白質ラベル化技術を利用することで、特定の細胞内酵素活性を光照射によって定量的に制御する技術を開発する。本研究においては、その標的分子として重要な創薬ターゲットであるキナーゼに対象を定めた。まず、がん関連蛋白質である上皮成長因子受容体(EGFR)のキナーゼ活性を制御するための分子プローブの開発の合成を開始した。設計したプローブはEGFR阻害剤ゲフィチニブの部分構造とタグ蛋白質eDHFRのフォトスイッチリガンドの二つの機能性部位を持つ二官能性化合物構造をしている。それぞれのフラグメントごとに合成を行い、幾つかの異なる長さのリンカーで連結する。最終的な連結はアジドとアルキンのClick反応を選択する。前年度は酵素阻害剤部位の合成を中途段階まで行っていた。今年度は合成途中段階からスタートし、アジドを含有するゲフィチニブ誘導体の合成を完了した。光応答性を持たないeDHFRリガンドであるトリメトプリムのアルキン付加体を別途合成し、Click反応により二官能性阻害剤の合成を完了した。また、細胞アッセイを進めるためにeDHFR融合EGFRのプラスミドを作成し、生細胞中における発現量の条件検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた光応答性二官能性阻害剤の合成が遅れており、引き続き検討する。
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今後の研究の推進方策 |
光応答性二官能阻害剤の開発とともに、蛋白質間相互作用をトリガーとするキナーゼ活性制御についても併せて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による実験実施の中断期間等があり、予定していた実験が2020年度中に完了しなかったため、2021年度も引き続き研究を行うこととした。主に当該研究に関わる実験消耗品ならびに実験補佐員の人件費に使用する予定である。
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