研究課題
生体内での酵素の機能やその複雑な分子ネットワークを解明する手法として、特定の酵素の活性を阻害剤などによって修飾し、それに応答した生体反応を調べる手法が古くから用いられている。もし特定の酵素活性を光刺激によって特定の場所で特定の時間に瞬時に変調させ、その細胞応答をリアルタイムに観察することができれば、標的酵素の生理的な役割に関して時空間的な情報が得られることから、これまで得られなかった機能の解明が期待できる。本研究では、申請者らが開発してきた光可逆的蛋白質ラベル化技術を利用して、特定の細胞内酵素活性の光照射による定量的な制御技術を開発する。標的分子としては創薬ターゲットとしても重要なキナーゼに対象を定めた。前年度までは、がん関連蛋白質である上皮成長因子受容体(EGFR)のキナーゼ活性を制御するために、EGFR阻害剤ゲフィチニブとフォトスイッチリガンドの二つの部位を持つ二官能性プローブの合成に取り組んでいたが、合成が難航したため、標的キナーゼを変更した。新たな標的として、ミトコンドリア上で機能するPINK-1を選択し、タグ蛋白質HaloTagと共発現させたPINK-1の細胞内局在の制御により、基質蛋白質のリン酸化を制御するシステムの開発に取り組んだ。合成した二量化プローブを用いて、細胞質に発現させたPINK-1を、405nmの光照射によって瞬時にミトコンドリア上に移行させることが可能であり、リン酸化によるシグナル伝達によって、マイトファジーを人工的に誘起することに成功した。
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