研究実績の概要 |
最終年度においては、前年度までに開発した9位にアルキンやニトリルを導入した一連のキサンテン誘導体のうち、細胞内求核分子と反応性を示す誘導体の探索と評価を行った。具体的には、細胞内に最も多く含まれる抗酸化物質の一つであるグルタチオン(GSH)との反応性を評価したところ、GSHがキサンテン環9位の炭素に付加することでラマン信号が減少する誘導体が複数あることを見出した。さらに、GSHとの反応性はキサンテン環3,6位のアミノ基上の置換基および10位元素の種類により異なること、さらに細胞内グルタチオン濃度範囲(0.5mM-10 mM)で応答する誘導体を見出した。 本研究期間全体を通じて、生きた細胞内の生体分子と反応してラマン信号が変化するラマンプローブの分子設計法を確立するべく検討した。具体的には、9位にラマンタグを導入した一連のキサンテン誘導体を合成したところ、色素構造や置換基により、ラマン信号強度やラマンシフト値が大きく変化することを見出し、ラマン信号強度を制御するために必要な化学構造要因の探索に成功した。さらに、様々なpHの緩衝液中での安定性や細胞内成分との反応性を評価したところ、これらの条件下における安定性・反応性は誘導体毎に異なることが明らかとなり、生きた細胞や組織における生体分子を検出するためのラマンプローブを開発するにあたり重要な知見を得た。今後本知見を活用することで、全く新たなラマンイメージングプローブの開発が進むと期待される。
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