研究課題/領域番号 |
19K22244
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山東 信介 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20346084)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 量子シークエンサー / DNA / 配列解析 / 1分子計測 |
研究実績の概要 |
量子シークエンサーは、DNA/RNAの1分子配列解析を可能にする次々世代シークエンサーとして、その実現が期待されている。一方、量子DNAシークエンサーには大きな問題点がある。各種核酸塩基から得られるトンネル電流値の差が小さく、それぞれの塩基由来のシグナルが大きく重なってしまうため、正確なDNA修飾情報の決定が難しい。本研究では、核酸塩基の化学的特性と量子トンネル効果の学術的理解から、特定修飾塩基のトンネル電流値のみを選択的に増大させる分子技術の開拓を目指している。 現在までに、金のフェルミ準位に近接する核酸塩基のHOMOがトンネル電流値に影響を与えることを明らかにしている。また、HOMOレベルをより近接させた修飾プリン塩基による、より高精度な核酸塩基検出が可能であることを示している。本年は、このコンセプトを修飾核酸塩基の検出に拡張した。具体的には、「修飾塩基特異的分子変換反応」によって、修飾核酸塩基の分子軌道エネルギーを変化させ、量子トンネル電流を用いた特異的検出を試みた。 修飾核酸塩基5-formyl-dUを検出対象とし、研究を進めた。o-フェニレンジアミンと5-formyl-dUが定量的に反応し、benzimidazoleを形成することを確認した。このbenzimidazole形成反応によって、HOMOレベルが金フェルミ準位に近接することを量子化学計算を用いて確かめた。実際に、0.6 nmの金ナノギャップを用い、このbenzimidazole-dUが優位に大きいトンネル電流を与えることが確認できた。この結果は、「修飾塩基特異的分子変換反応」による修飾塩基特異的な量子トンネル電流の自在変化が可能であることを示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で提案する「修飾塩基特異的分子変換反応を用いた量子トンネル電流による修飾核酸塩基の検出」に向けた実証実験を進めた。具体的には下記の結果を得ている。 1. 修飾核酸塩基5-formyl dUを検出対象とし、研究を進めた。2. o-フェニレンジアミンと5-formyl-dUが定量的に反応し、benzimidazoleを形成することを確認した。3.このbenzimidazole形成反応によって、HOMOレベルが金フェルミ準位に近接することを量子化学計算にて確かめた。4. 実際に、0.6 nmの金ナノギャップを用い、このbenzimidazole-dUが優位に大きいトンネル電流を与えることを確認した。5. DNA配列中において、benzimidazole-dUは高強度なトンネル電流シグナルとして、標準塩基から識別可能であることを確かめた。
これらの結果は、「修飾塩基特異的分子変換反応」による修飾塩基特異的な量子トンネル電流の自在変化が可能であることを示すものであり、量子シークエンサーを用いた修飾部位の特異的検出の実現に向けた重要な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、「修飾塩基特異的分子変換反応を用いた量子トンネル電流による修飾核酸塩基の検出」 に向けて、核酸塩基のHOMOレベルの自在制御とそれに付随するトンネル電流値の変化に着目した研究を進めた。その過程で、検出される分子のHOMOレベルだけでなく、金ナノ電極と分子の分子間相互作用が重要な要素であることを見出している。2020年度は、2019年度に引き続き、金ナノ電極と分子の分子間相互作用に着目した修飾核酸塩基検出について研究を進めていく。また、電流値の絶対値だけでなく、様々な検出ファクターを組み込んだ多次元解析系へと展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度研究実施中に、量子トンネル電流を用いた核酸誘導体の研修においては、検出される分子のHOMOレベルだけでなく、金ナノ電極と分子の分子間相互作用が重要な要素であることを見出した。そのため、当初の予定を変更し、2019年度にはその予備検討実験を実施し、2020年度に多次元解析も実施することとした。そのため、50万円を2020年度に繰り越した。
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