研究課題
甲虫の上翅は、外敵から柔らかい組織を保護するための防御機能を有する他、飛翔の際のバランサーの役割を果たしており、軽量さと頑丈さを併せ持つ材料として、航空機、ロボット等の産業分野において注目を集めている。本研究では、甲虫上翅の機械特性の向上に関わるドラスティックな表皮構造変化の分子機構の解明と材料開発への利用を目的としている。本年度は、甲虫の上翅から同定された表皮タンパク質のキチン結合能解析とタンパク質を利用した材料作製を行った。1.甲虫表皮タンパク質のキチン結合能評価これまでの検討で、異なる表皮形成時期に特異的に発現する3つの表皮タンパク質グループの存在を明らかにしている。これらのタンパク質には、従来のものとはアミノ酸配列が大きく異なるキチン結合ドメイン様の部位が確認されている。そこで大腸菌発現系によりタンパク質を調製し、キチンとの結合試験を実施した。比較として昆虫由来のキチン結合タンパク質を用いて検討を行ったところ、同様のキチン結合能が確認された。本検討によって、甲虫由来表皮タンパク質のキチン結合能をはじめて示した。2.キチン/タンパク質複合体材料の作製高分散性のキチンナノ結晶を用いて、フィルム状材料の作製を行った。キチンナノ結晶は溶液中で液晶挙動を示し、一定の配向性を持つ。条件検討の結果、層状構造を持つフィルム材料の作製に成功した。また、キチンとタンパク質を混ぜることによって、キチン/タンパク質複合体材料を作製した。
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Advanced Functional Materials
巻: 31 ページ: 2106468
10.1002/adfm.202106468
Acta Biomaterialia
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