研究課題/領域番号 |
19K22254
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中谷 和彦 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (70237303)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 核酸 / 低分子 / 複合体 / 形成過程 / 計算機科学 |
研究実績の概要 |
低分子とRNAの複合体形成は、動的な構造変化を伴う「誘導適合」で進むため、RNA結合分子の設計は現状ではほぼ困難である。本研究では、誘導適合型の低分子-RN A結合の本質的な理解と、研究者が気付かない複合体形成要因の解明が不可欠であると考え、巨大な分子サイズの低分子-RNA複合体の形成経路を理論科学的に解き明かし、各種情報の分子設計へのフィードバックを狙った。当初計画では、構造既知の低分子-RNA複合体を題材として、複合体形成経路を探索し、最新の計算手法による超高精密エネルギー計算、遷移状態計算、特徴量抽出をよていした。 実際には、中谷研究室が明らかにした、分子NAとCAG/CAG複合体、分子NCDとCGG/CGG複合体、分子NCDとUGGAA/UGGAA複合体を用い、可能な複合体の形成経路の探索を試みた。その結果、これらの複合体の低分子結合探索経路は、化学結合量論比がいずれも低分子2に対して核酸1であることから、低分子の結合順序が要因として加わるために、非常に複雑になることが明らかとなり、シミュレーション実験が現実的な時間単位では実行が難しい事が判明した。当初の目的に沿ってすすめるため、対象とする複合体を化学量論比が1:1である、DANP-Cバルジ複合体に焦点をあて、DANPの結合経路を探索した。NMR構造は千葉工業大学の河合教授との共同研究で得られた構造を参考にした。シトシンバルジの対面にあるDANPを、水素結合と直角方向に適当な距離で引き離した初期構造を発生し、その構造からの安定構造をシミュレーションにより求めた。その結果、複合体構造が形成するまでに複数の遷移状態が存在することが明らかとなり、精密構造解析により遷移状態の構造の手がかりを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初設定した複合体の形成経路解析に時間を費やしたが、化学量論比ならびに、用いた分子NA, NCDの2つの複素環がどの順序でミスマッチ塩基対に結合するかなど、組み合わせが非常に複雑で、精密計算に進むだけの根拠のある構造を提案することが難しかった。課題設定の時点である程度想定してはいたが、マニュアルでの結合経路導出では時間がかかり過ぎた。最終構造から低分子を無限遠に遠ざける過程を自動発生するプログラムも利用など、より効率的に経路を発生させる手法を今後取り込んで行く必要があることがわかった。 一方、DANP-Cバルジ複合体は、複合体構造が複雑さに於いて当初予定していた複合体に比べて格段にかんたんな構造であるため、マニュアルによる結合経路解析も比較的スムーズに進んでいる。当初計画からは進捗が遅れたが、今後この手法により計算結果をまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
DANP-Cバルジ複合体に絞り、現在結合経路探索を提案どおりに進めている。複合体構造が比較的かんたんな構造であるため、今後はさほどの困難な状況は生じないと想定している。一方で、当初設定していた複合体ほど、複雑な結合経路ではない可能性が高く、得られる結論が想定内の結果となる可能性も高い。そのため、DANP-Cバルジ複合体での検討がある程度進んだ時点で、再度NA-CAG/CAG複合体に挑戦してみたい。その際には、マニュアルでの中間構造の発生による恣意的な結果となることを防ぐために、任意性の高い中間体発生のプロトコルを採用する。具体的には、水素結合している低分子側の窒素原子の位置をある空間内でランダムに発生した座標に移動させるなどの手法を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究概要で報告したように、複合体形成経路の精密計算に進むべき構造をシミュレーションにより発生するに至らなかったため、精密量子計算機の購入を見送った。初年度は、現有装置による計算機環境で十分であったっために、次年度の予算と合わせて、精密量子計算機を購入し、複合体経路の解析に用いる計画である。
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