研究課題/領域番号 |
19K22255
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菊地 和也 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70292951)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 光スイッチング / 超解像イメージング / 化学プローブ / RESOLFT |
研究実績の概要 |
本研究では、新たな蛋白質・合成蛍光プローブのペアを用い、化学原理に基づき蛍光スイッチ機能を持つ超解像イメージングプローブを設計・ 開発することを目的とする。この目的達成のためには、標的となる生体分子を蛍光色素で特異的に標識し、その色素の蛍光特性を変化させるスイッチ機能が必要である。超解像イメージング技術として知られているRESOLFTに応用可能な光制御可能な蛍光スイッチプローブの開発を行った。設計した蛍光スイッチプローブは、蛍光色素、光スイッチ部分、消光基の3つの部分から構成されている。光スイッチ部分として、光異性化能が高く、熱による逆反応が起こりにくいアリルアゾピラゾールを選択した。また、蛍光色素、消光基として近赤外蛍光を示す色素Atto655とジニトロベンゼンを選択した。消光基の存在下でAtto655の蛍光強度が下がっていくことを確認したため、光スイッチ部分であるアリルアゾピラゾールの両端に蛍光色素と消光基をそれぞれ連結したプローブを設計・合成した。設計にあたり、分子力場計算でそれぞれの異性化体における蛍光色素と消光基との重なりを調べ、脂溶性、水溶性リンカーの導入などを施し最適な構造を求めた上で合成を行った。合成したプローブに光を照射し、異性化能を調べたところ、ほぼ定量的に光異性化反応が起こっていることを確認できた。さらに、各異性化体の蛍光強度を比較したところ、蛍光強度に有意な差が見られ、光照射による蛍光スイッチが可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、化学原理に基づき開発したプローブによって光照射に応じた蛍光スイッチングを達成しており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、開発したプローブを用いて、RESOLFTによる超解像イメージングへの応用を試みる。また、蛋白質・合成蛍光プローブを利用した1分子単位で蛍光の点滅を取得するイメージング法の開発を進める。具体的には、標的タンパク質にラベル化する時は蛍光を発し、解離すると蛍光を発しない可逆性のラベル化プローブを開発する。融合発現可能なタグ蛋白質として、疎水性ポケットを有し、疎水性の匂い物質をリガンドとして可逆的に結合するOdorant Binding Protein (OBP)を選択する。OBPのリガンドと環境感受性の蛍光色素を組み合わせたプローブを合成し、蛋白質との可逆的結合を蛍光点滅として1分子単位で取得できる手法を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で予定していた出張予定がキャンセルとなり、次年度使用額が生じた。翌年度分として合わせ、研究遂行のための物品費、旅費等に充てる予定である。
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