研究課題/領域番号 |
19K22256
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川井 清彦 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50314422)
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研究分担者 |
小阪田 泰子 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (00579245)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | アルコール / アセトアルデヒド / 1分子計測 / DNA / 次世代シークエンサー |
研究実績の概要 |
本研究では、国際がん研究機関より、ベンゼンなどと同じ「G1: ヒトに対する発がん性がある」に分類されている発がん物質であるアルコールの摂取により過渡的に体内に生じる核酸付加体“N2-ethylidene-G (ethG)”の形成に迫る。ethGによる変異は、複製の際にグアニン(G)鋳型に対して本来取り込まれるべきシトシン(C)以外が取り込まれ遺伝情報が書き換えられることにより引き起こされ、発ガン、老化の原因となることが示唆されている。ethGは、アルコール代謝物であるアセトアルデヒドとGが反応することにより生じるが、不安定で寿命が短く、生理的条件のアルデヒド濃度における生成量などの詳細は不明であった。本研究では、網羅的な1分子蛍光観測が可能である、PacBio社製次世代シークエンサー(RSII+)を用いて、生理条件下でのDNA配列上でのethGの定量、その寿命や、会合定数、塩基対形成能を調べることを目的とした。2019年度の研究では、研究協力者イェンス・ソーベック博士(スイスチューリッヒ大学)の協力のもと、RSII+を用いたアルデヒド存在下におけるethGの生成の観測を行い、カギとなるethGの形成をDNA上で一分子観測したことを示唆する結果が得られた。次世代シークエンサーでは1日の実験で100 GBを超える大量のDATAが得られ、DATAの抽出・解析がキーとなる。2020年度は詳細なDATA抽出、データ解析を行い、GからethGが形成され、再びGへと戻る過程や、光損傷へと至る過程の統計を取り、ethGの生成の頻度におけるアルデヒドの影響や、還元剤であるビタミンC存在下における物質変換について詳細に検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年は、詳細なDATA解析に取り組み、ethGの寿命や、会合定数を決定できることを示唆する結果を得た。しかしながら、新型コロナウイルスの拡散ため、RSII+測定を依頼しているスイスチューリッヒ大学のイェンス・ソーベック博士の元を訪問することができず、意思疎通に時間を要するなどしたため、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
高濃度となる5 mMのアセトアルデヒド存在下で、過渡核酸付加体の生成を示唆する結果を得た。本研究の最大の目的は、生理条件下での過渡核酸付加体の生成についての議論であり、アセトアルデヒドの濃度を1 mM~10 μMの範囲で変化した条件での測定を試みる。(飲酒後の血中アセトアルデヒド濃度は、ビール500 mL 2本のアルコール量を酒に強いとされるALDH2*1/*1遺伝子型の成人男子が摂取した場合10 μM程度と報告されており(Alc. Clinic. Exp. Res. 38 (2014) 1502.))生理条件下での過渡核酸付加体の生成は、当然顕著では無いため、データの抽出および解析がカギとなる。2019年は、大阪大学産業科学研究所産業科学AIセンターの協力を仰ぎ、データ解析法を確立し、生理条件下においてDNA配列上で生じるethGの定量、その寿命や、会合定数、塩基対形成能を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シークエンサーを用いた測定により、膨大なデータが得られ、次の測定に移る前に結果を解析するために長時間を要したため。また、新型コロナウイルスの影響により、研究連携者の所属するスイスチューリッヒ大学を訪問し、測定、議論を行う予定を延期したため。2021年度は、スイスチューリッヒでの滞在実験費、および、その際に必要となる消耗品およびマシンタイム費、大阪大学における、1分子蛍光観察による条件検討に必要となる消耗品費として利用予定である。
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