研究課題/領域番号 |
19K22258
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
澤 智裕 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (30284756)
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研究分担者 |
津々木 博康 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (40586608)
荒木 令江 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (80253722)
小野 勝彦 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (80573592)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 活性イオウ / システインパースルフィド / マクロファージ / 細胞内殺菌 / 食作用 |
研究実績の概要 |
マクロファージによるファゴサイトーシス(食作用)を介した殺菌は重要な感染防御機構である。細菌を取り込んだマクロファージはその後、活性酸素と消化酵素を利用して細胞内で細菌を死滅させる。システインパースルフィド(Cys-SSH)は、システインのチオール基(Cys-SH)に過剰なイオウ原子が付加しただけのシンプルな構造にもかかわらず、システインに比べて著しく抗酸化力が高まっており活性イオウと呼ぶ作用を有する。これまでの検討から、マクロファージを活性イオウドナーで処理すると、細胞内の菌数が顕著に減少することを発見した(未発表データ)。本研究では、活性イオウによて増強される細胞内殺菌機構の解明を目指す。本年度はヒト単球由来THP-1細胞をホルボールエステルでマクロファージに分化させた細胞を用いて、ことなる細菌に対する殺菌作用が活性イオウで増強されるかを検討した。その結果、グラム陰性細菌であるネズミチフス菌、大腸菌、セラチア菌、緑膿菌に対する殺菌作用が活性イオウドナー処理によって有意に増強された。活性イオウドナー処理により変動するタンパク質の機能を解析するために、マクロファージからタンパク質を抽出し、リン酸化修飾の変動をプロテオミクス解析した。現在、質量分析まで実施済みで、そのデータ処理を行っている。今後、変動するリン酸化修飾タンパク質が同定された場合、そのタンパク質の細胞内殺菌への影響をノックダウン等により明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数のグラム陰性菌に対して、活性イオウドナーがマクロファージの殺菌活性を高めることを明らかにできた。さらにリン酸化翻訳後修飾に対する活性イオウドナーの影響についても、解析が進みつつあり、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
プロテオミクス解析について、データ処理を行い、もっとも変動の大きかったタンパク質からランキングの作成を行う。さらにそのタンパク質の活性が変動することおよぼす細胞内シグナルネットワークを明らかにし、活性イオウが標的とする細胞内シグナル経路から、殺菌増強作用のメカニズムに迫る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、プロテオミクス解析により、活性イオウドナーで処理した細胞で変動するリン酸化タンパク質を同定した。ネットワーク解析から細胞内殺菌に関わるタンパク質を絞り込む作業をしており、それが決定され次第、抗体を購入する予定であり、そのための経費を次年度に繰り越した。
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