研究課題/領域番号 |
19K22263
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
森 春英 北海道大学, 農学研究院, 教授 (80241363)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 糖質 / 加リン酸分解酵素 / 加水分解酵素 / 糖転移 |
研究実績の概要 |
糖質は,食品用途はじめ,農・医薬・工の幅広い分野で利活用が期待される.糖質は構成糖・結合様式・鎖長の違いにより多様性を示し,これらの利活用には,まずは,個々の糖質の合成が必要である.多彩な糖質の合成に適した酵素種の爆発的増加をもたらす技術として,本研究では,多様な加水分解酵素を加リン酸分解酵素に変換するための分子基盤の理解と技術開発を行う. 既存酵素ファミリーに属しながらも機能が不明であった推定タンパク質に注目した.この組換えタンパク質を大腸菌により生産・調製し,精製酵素の機能解析を行った.本酵素は無機リン酸存在下では加リン酸分解によりオリゴ糖の低分子化を主反応とし,またリン酸の有無にかかわらず鎖長の異なる様々な糖質を合成した.この性質を利用し,重合度の高い各種糖質の合成が可能であることを示した.無機リン酸ならびに各種鎖長のオリゴ糖に対する基質特異性について解析を行い,速度論的パラメータにより本酵素の基質特異性を精密に評価した.本酵素は比較的長鎖のオリゴ糖を基質として好み,低重合度基質に対する速度は極端に低下した. 本酵素による反応では,条件によっては高重合度化により通常の水系において沈澱が生じた.沈澱物を回収して各種重合度分析により,精密な鎖長分布も含めて生成した沈澱物の解析を行った.糖転移反応および逆加リン酸分解反応により,本酵素はその高重合度オリゴ糖への基質特異性により,非常に高重合度生成物まで生じることが確認された. 酵素については,加水分解酵素との構造比較に基づき変異酵素を作出し,解析を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加リン酸分解酵素について,機能解析,糖質合成への応用が行われ,機能に関わる構造因子について予定通り解析が進んでいるため.
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今後の研究の推進方策 |
1. 解析中の酵素について,変異酵素等の解析により,加リン酸分解酵素として必須要素について因子を探索する.加えて,本酵素の有する長鎖多糖合成能を生かすべく,転移反応の結合様式の改変の可能性についても検討を進める. 2. 本酵素およびこれに類する酵素群に構造的にある程度類似するタンパク質数種を検索し,これらを候補として加水分解酵素または加水分解活性を有する加リン酸分解酵素を見出したい.1項において見出された加リン酸分解酵素としての必須因子を導入し,加リン酸分解酵素化あるいは低加水分解酵素化を図る.
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