大腸菌と光合成微生物の藍藻から非栄養元素の輸送体を探索して,Naなどの非栄養源を細胞は輸送して,通常では使用しないと考えられているNaなどの元素を利用する可能性を検証することを目的に研究を行った.大腸菌のK輸送体の多重変異株およびNa輸送体の多重変異株を作成してその性質を調べた TrkG がNaを栄養元素として利用する可能性が高いことを示すため,TrkGを導入した大腸菌を様々な陽イオンの濃度の培地で生育させる実験を行った.しかし,Na培地でよりよい増殖は認められなかった. TrkGとTtkH は相同性のあるホモログでありながら,Na依存性に関する差異があることから,両者のキメラタンパク質を作成して検討を行った.様々なキメラタンパク質を作成したが,輸送活性を消失するキメラタンパク質しか得られなかった.TrkHはTrkGよりも大きな輸送活性を示すことから,タンパク質安定性または,膜への挿入度合いを検討するために,N末端に付属する膜輸送には関係ないと考えられる2回膜貫通領域を入れ替えたキメラを作成した.入れ替えたことによって,大きな輸送活性への違いは認められなかったことから,本体の構造に輸送機能を決める箇所があることが分かった.藍藻はNaに耐性を示すだけではなく,ストレス環境ではNaを要求する.培地の検討により,Naを要求する環境を見いだした.この環境で,藍藻のNa/Hアンチポーター遺伝子変異株を用いた増殖試験を行った.2つの変異株において,Naの少ない培地で増殖が見られなくなったことから,Na/HアンチポーターがNaを用いて,栄養源として利用していることが明らかになった.
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