研究課題/領域番号 |
19K22268
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
繁森 英幸 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70202108)
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研究分担者 |
平 修 福島大学, 食農学類, 教授 (30416672)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 光屈性 / 重力屈性 / 屈性制御物質 / Bruinsma-Hasegawa説 / raphanusanin / DIMBOA / イメージングMS |
研究実績の概要 |
植物の光[重力]屈性は、「オ-キシンが光側[上側]から影側[下側]組織に移動することによって、影側[下側]組織の成長が促進されて屈曲する」というCholodny-Went 説で説明されている。一方で、当研究室の先行研究により、「オ-キシンの移動は全く起こらず、光側[上側]組織で生成された光[重力]屈性制御物質によって屈曲する」というBruinsma-Hasegawa説が提唱されている。研究代表者らは、これまで種々の植物から光[重力]屈性制御物質を単離構造決定してきた。 そこで本研究では、ダイコン芽生えの光屈性制御物質であるraphanusaninについて全合成を行い、種々の類縁体も合成した。これらを片側投与試験や切片伸長試験に供した結果、raphanusaninおよびMTBIでは屈曲および抗オーキシン活性を示したのに対し、イソチオシアネート構造を持たないものでは屈曲および活性は認められなかった。したがって、活性発現にはイソチオシアネート構造が重要であることが分かった。 また、トウモロコシ芽生えについて、その光屈性制御物質であるDIMBOAの欠損変異株を用いて光[重力]屈性試験を行った結果、野生株と比較して屈曲までの時間に遅延が観察され、光側[上側]組織に成長抑制が見られなかった。したがって、トウモロコシ芽生えの光[重力]屈性において、DIMBOAとMBOAのような屈性制御物質が確実に関与することを見出した。 一方で、ダイコンならびにトウモロコシ芽生えに光[重力]刺激を与え、屈曲部分についてミクロトームを用いて縦軸ならびに横軸方向における切片を作製した。作製した切片についてNano-PALDIイメージングMSを用いて、raphanusaninならびにDIMBOAの観測を行った結果、光側[上側]と影側[下側]組織において若干の偏差分布が観測されたが有意差は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ダイコンならびにトウモロコシ芽生えに光[重力]刺激を与え、屈曲部分についてミクロトームを用いて縦軸ならびに横軸方向における切片を作製した。作製した切片についてNano-PALDIイメージングMSを用いて、raphanusaninならびにDIMBOAの観測を行った結果、光側[上側]と影側[下側]組織において若干の偏差分布が観測されたが有意差は得られなかった。 そこで、もっと多くの切片を作製してイメージングMSを測定して有意差を調べる予定であったが、コロナ禍の影響もあり測定することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ダイコン由来の屈性制御物質raphanusaninならびにMTBIについては引き続き構造活性相関を調べる。また、トウモロコシ芽生えについては、突然変異体におけるDIMBOAならびにMBOAの内生量を測定し、野生株と比較することで屈性制御物質の偏差分布を調べる。さらに、他の植物芽生えについても同様に制御物質を用いた機構解明を行う。一方で、イメージングMSについては、種々の条件でのダイコン芽生えやトウモロコシ芽生えの切片を作製し、偏差分布の可視化を検討する。また、この際にオーキシンであるIAAについても測定し、従来の説に基づく偏差分布が起こっているのかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
すでに得られたイメージングMSの結果について、有意差を調べるために多くの切片を作製してイメージングMSを測定する予定であったが、コロナ禍の影響でサンプル調製ならびに研究分担者の福島大学におけるNano-PALDI-MS装置を使用することができなかった。したがって、これに関わる旅費ならびに消耗品が執行できなかった。また、研究成果についても学会発表を行う予定であったが、学会が中止となってしまったため、これに関わる旅費も執行できなかった。本年度は、今回行うことができなかったサンプルに加えてさらに多くのサンプルを調製し、イメージグMSの測定を行うとともに、その研究成果発表に関わる経費を計上する。
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