研究課題/領域番号 |
19K22272
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
千葉 一裕 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 学長 (20227325)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | ペプチド / 液相合成 / 電解反応 / 化学合成 |
研究実績の概要 |
本研究は申請者がこれまでの研究で開発した逆ミセル反応法を飛躍的に発展させることによって,従前技術ではほぼ不可能であった10兆種類のペプチド等モル混合物を迅速かつ効率的に得るための新しい化学プロセスを確立することを目的とする. 申請者が独自に開発した逆ミセルを形成する可溶性タグに対しアミノ酸をランダムに10回反応させることにより,1容器内に10merのペプチドを得るが,このときアミノ酸の種類によって反応性がそれぞれ異なるため,20種類のアミノ酸を混合溶液として反応させることなく,一段階毎に20種類それぞれのアミノ酸を活性化した容器に可溶性タグ溶液を等量分注し個別に反応を行った.20個の反応容器においてそれぞれの反応完結に要する時間は15分程であったが,これら全ての完了をTLC等で確認後,過剰のアミノ酸や試薬の洗浄後,20容器の溶液をすべて一つの容器に混合する.その後も同様に混合液を20等分→各アミノ酸との個別反応→洗浄→混合を繰り返すことを基本とする.この操作はすべて液相反応として実施できるためスケールアップについてはグラムレベルまで拡大することができた. しかしこれらの方法を導入しても,製造されたペプチドの配列によっては不溶化,分子間相互作用による高粘度化などが発生した.すなわちペプチドの難物性化は通常,立体障害の少ない連続するアミド結合における分子内および分子間水素結合によって発生する.このペプチド合成に必ず付随する物性面での課題については,N-アルキル化タグの導入により解決を試みた.これはペプチド鎖伸長反応において一定の間隔でアミノ基にN-アルキル化タグを導入することによってこの作用を抑制するものである. これら一連の研究開発により,極めてシンプルな操作で膨大な分子種を体系的に合成する方法が確立された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究は、概ね当初の計画どおりに進める事がきた.その一方で,予想されたことではあるが,ペプチド合成途上において,多様なペプチド分子種の構造によっては難溶性等の物性を示すものが生成し,これにより一連の反応プロセスの迅速性が損なわれた.これらを克服するための方法についてもすでに計画しているため,その導入を含めて目的を完遂する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
合成途上のペプチドの構造によっては分子間水素結合が強固となり,高粘度化,不溶化など化学プロセス上,しばしば取扱困難な物性になること,さらにこれらの発生が事前に予想できないこと,一般に過剰量の試薬が必要となって多大なコストがかかることなどが理由として掲げられる. 反応系はすべて完全に均一な溶液内で行い,さらに合成途上のペプチド分子を逆ミセルというナノスケールの分散形態となるように設計することによって,凝集を抑制ことを基本とする.その一方で,ペプチド鎖の分子間相互作用による分子集合体が,不規則に発生する事は避けることができない.そこで、分子間水素結合に関与するアミド結合に対し,一定間隔で嵩高い保護基を導入し,ペプチドの伸長反応を行い,最終段階におけるグローバル脱保護反応によって目的とするペプチドを得ることを計画する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開発は計画通り進行しているが、その途上で、より一般性を高めるための方法を導入することにより、より波及力のある成果に結びつくことが明らかになった。そのため、予算の一部について次年度使用額として留保した。
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