研究課題
挑戦的研究(萌芽)
近年、バイオ医薬品、特に抗体製剤が盛んに開発されている。抗体の安定性を高めるためには多量の保存剤の添加と低温管理が必要である。しかし凍結融解によって抗体は凝集し、製剤としての性能が著しく低下する。一方われわれは、植物種子の凍結保存性に関与するタンパク質デハイドリンのFセグメントが、タンパク質の凍結変性を強力に抑制することを見出した。本研究では、抗体の凍結凝集がFセグメントによって効率よく抑制できることを示し、その凍結保護作用のメカニズムについて考察した。
植物機能生理学
本研究の学術的意義は、種子の低温耐性に関与し、一定の形をとらない天然変性タンパク質であるデハイドリンが、他のタンパク質を凍結ストレスから守る仕組みを解明した点である。社会的意義としては、デハイドリンの機能がバイオ医薬品、特に抗体製剤の保存技術を格段に向上させる可能性を示した点である。