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2019 年度 実施状況報告書

カルシウムシグナリングはなぜ多様性を発揮できるのか:情報変換分子の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K22276
研究機関中部大学

研究代表者

前島 正義  中部大学, 応用生物学部, 教授 (80181577)

研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2022-03-31
キーワード情報変換 / 細胞膜 / カルシウムシグナル / 脂質シグナル
研究実績の概要

生命科学の難問である「カルシウムシグナリングはなぜ多様性を発揮できるのか?」を解くことを目標としている。細胞情報シグナリングは、カルシウム、cAMP、イノシトールリン脂質が主役となり、状況に応じて時空間特異的に情報を的確に伝える。中でもCaは二次メッセンジャーとして重要である。細胞質Caは極めて低い濃度に精密に維持され、Ca濃度の一過的な上昇により、例えばカルモジュリンがCaと複合体を形成してキナーゼを活性化し、標的タンパク質の機能を調節する。植物では、光・ホルモン・病理・機械刺激応答、重力屈性等、Caが介在する反応は多様である。では、なぜCaの濃度変化は多様な応答を引き起こすことができるのだろうか? この問に関連する分子として細胞膜結合型Ca結合タンパク質PCaPを見出した。このPCaPは、CaM/Caとホスファチジルイノシトールリン酸(PIP)に拮抗的に結合し、CaM/Caが形成されると、PCaPは結合していたPIPを遊離する。PCaPが、Caシグナルを脂質シグナルに変換するハブ機能を果たしている可能性が高い。カルシウムシグナリングの多様性の分子機構解明につながると期待しつつ、下記の実験を進めた。
(1)シロイヌナズナのPCaP1遺伝子欠失株では根の水分屈性が低下することを見出し、根の特定の細胞でのPCaPの細胞内局在性が顕著に変化すること、そして水分屈性に関わるMIZ1遺伝子との関連等の知見をまとめて論文発表した。
(2)PCaPと相互作用する情報脂質分子を可視化するための蛍光プローブ導入株の作出を進めている。
(3)シロイヌナズナに加えて、コケ植物にもPCaP類縁分子が存在することを遺伝子レベルで見出した。その遺伝子欠失株では、植物体の形態的変化(表現型)が著しく、新たな研究対象植物に加えた。この分子の挙動を明らかにし、相互作用分子を解明するために特異抗体を調製した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していた3課題、すなわち(1)PCaPと相互作用するタンパク質分子の同定、(2)PCaP分子と相互作用する脂質シグナル分子の可視化と解析、(3)PCaPの水分屈性への寄与の解明、について、それぞれ当初の予定通り進めることができた。また、PCaPに対する抗体は極めて特異性が高く、今後の研究に活用できるものであった。

今後の研究の推進方策

研究課題としている3課題について、下記のように進めていきたい。
(1)PCaPと相互作用するタンパク質分子の同定: 植物組織から細胞膜を含む膜画分と可溶性画分を調製し、免疫共沈法、酵母ツーハイブリット法、免疫ブロット法等を駆使して、候補分子を探索し、分子の特定につなげる。特定できた場合は、分子同士の結合特性を明らかにする。
(2)PCaP分子と相互作用する脂質シグナル分子の可視化と解析: 現在進めているPCaP欠失株と脂質シグナル分子(PIP)可視化株の掛合せ株から、ホモラインを選抜して、野生株とPCaP欠失株とで、脂質シグナル分子の挙動の差異を比較検討し、PCaPの作動機構の解明の主要な知見とする。
(3)PCaPの水分屈性への寄与の解明: 上記の変異株も用いて、水分屈性に対するPCaPの寄与について、さらに多くの知見を蓄積し、再度、水分屈性を専門とする研究者との共同研究を進める。

次年度使用額が生じた理由

下記の理由により、次年度に使用する額が生じた。
2019年度の実験・研究成果を3月開催の学会にて発表する予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響により参加を予定していた学会が中止になり、旅費を繰越し、次年度に学会が実地開催可能の場合にはその経費に充てることになった。また、2019年度に予定していた研究補助員の雇用が困難となり、その人件費予算を次年度に使用することとなった。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件)

  • [国際共同研究] Sapienza University(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      Sapienza University
  • [雑誌論文] Arabidopsis PCaP2 modulates the phosphatidylinositol 4,5-bisphosphate signal on the plasma membrane to attenuates root hair elongation.2019

    • 著者名/発表者名
      Kato, M., Tsuge, T., Maeshima, M., and Aoyama, T.
    • 雑誌名

      The Plant Journal

      巻: 99 ページ: 610~625

    • DOI

      doi: 101111/tpj.14226

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Plasma membrane-associated cation-binding protein PCaP1 is involved in hydrotropism of Arabidopsis roots.2019

    • 著者名/発表者名
      Tanaka-Takada, N., Kobayashi, A., Takahashi, H., Kamiya, T., Kinoshita, T., and Maeshima, M.
    • 雑誌名

      Plant & Cell Physiology

      巻: 60 ページ: 1331~1341

    • DOI

      https://doi.org/10.1093/pcp/pcz042

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A cell-wall protein SRPP provides physiological integrity to the Arabidopsis seed.2019

    • 著者名/発表者名
      Uno, H., Tanaka-Takada, N., Hattori, M., Fukuda, M., and Maedhima, M.
    • 雑誌名

      Journal of Plant Research

      巻: 132 ページ: 145~154

    • DOI

      doi: 10.1007/s10265-018-01083-6

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Polar vacuolar distribution is essential for accurate asymmetric division of Arabidopsiszygotes2019

    • 著者名/発表者名
      Kimata Yusuke、Kato Takehide、Higaki Takumi、Kurihara Daisuke、Yamada Tomomi、Segami Shoji、Morita Miyo Terao、Maeshima Masayoshi、Hasezawa Seiichiro、Higashiyama Tetsuya、Tasaka Masao、Ueda Minako
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences, U.S.A.

      巻: 116 ページ: 2338~2343

    • DOI

      doi: 10.1073/pnas.1814160116

  • [雑誌論文] Excess pyrophosphate within guard cells delays stomatal closure2019

    • 著者名/発表者名
      Asaoka Mariko、Inoue Shin-ichiro、Gunji Shizuka、Kinoshita Toshinori、Maeshima Masayoshi、Tsukaya Hirokazu、Ferjani Ali
    • 雑誌名

      Plant and Cell Physiology

      巻: 60 ページ: 875~887

    • DOI

      https://doi.org/10.1093/pcp/pcz002

  • [雑誌論文] The ER-localized aquaporin SIP2;1 is involved in pollen germination and pollen tube elongation in Arabidopsis thaliana2019

    • 著者名/発表者名
      Sato Ryosuke、Maeshima Masayoshi
    • 雑誌名

      Plant Molecular Biology

      巻: 100 ページ: 335~349

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/s11103-019-00865-3

  • [学会発表] 新規情報伝達タンパク質PCaP1 のメリステム形成への影響2020

    • 著者名/発表者名
      田中奈月,水谷未耶,奥田慎平,西浜竜一,河内孝之,前島正義,Liam Dolan
    • 学会等名
      日本植物生理学会年会
  • [学会発表] 細胞膜カルシウム結合分子PCaPを介した細胞内情報の新しい変換機構の解明.2019

    • 著者名/発表者名
      田中奈月、小林啓恵、高橋秀幸、Liam Dolan、前島正義
    • 学会等名
      日本植物学会第83回大会
  • [学会発表] 時計因子ELF3は胚軸における水輸送調節にどのように関連しているのか?2019

    • 著者名/発表者名
      藤田知美、奥村綾子、土平絢子、前島正義、且原真木、奈良久美
    • 学会等名
      日本植物学会第83回大会
  • [学会発表] GFPやTagRFPによるオイルボディ・液胞形態と植物生長への人為的影響.2019

    • 著者名/発表者名
      瀬上紹嗣、島田貴士、嶋田知生、西村いくこ、前島正義
    • 学会等名
      日本植物学会第83回大会
  • [学会発表] Live-cell imaging of the polarization dyanamics of plant zygote: polar vacuolar distribution is essential for accurate asymmetric division.2019

    • 著者名/発表者名
      Ueda, M., Kimata, Y., Kato, T., Higaki, T., Kurihara, D., Segami, S., Terao-Morita, M., Maeshima, M., Hasezawa, S., Higashiyama, T.
    • 学会等名
      The 42nd Annual Meeting of the Molecular Biology Scociety of Japan

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公開日: 2021-12-27  

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