研究課題/領域番号 |
19K22284
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
石川 孝博 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (60285385)
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研究分担者 |
丸田 隆典 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (50607439)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | アスコルビン酸 / トマト果実 / 生合成 / 輸送 |
研究実績の概要 |
本研究ではトマトをモデルに、果実になぜアスコルビン酸が高濃度に蓄積するのか、その機構や生理的意義の解明を目的に、初年度は以下の研究を実施した。 計画1)果実成熟初期段階のアスコルビン酸転流に関わる輸送体の探索:予備実験の結果より、目的としているアスコルビン酸輸送体は果実成熟初期段階特異的に発現して機能していることが強く示唆された。そこで次に、成熟初期段階および成熟期の果実からRNAを調製し、次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を実施した。果実成熟初期段階に有意差をもって発現している輸送体候補タンパク質遺伝子のリストを作成した。 計画2)果実成熟期に活性化される未確定アスコルビン酸生合成経路の同定:果実成熟期において誘導・活性化される未同定のウロン酸経路の存在を明らかにし、アスコルビン酸合成と蓄積への関与を実証するために、ウロン酸経路の鍵を握る2つの酵素、ガラクツロン酸還元酵素とアルドノラクトナーゼに着目した。今年度は特に後者の陸生植物では未同定のアルドノラクトナーゼについて、トマト果実の組織分画をおこない酵素活性を指標に同酵素の局在を調べた結果、隔壁の膜画分に強い活性が検出されることを見出した。現在、隔壁の膜画分から各種クロマトグラフィーを用いたアルドノラクトナーゼの部分精製を進めている。また今年度は、同酵素同定に向けたnanoLC-MSの準備も平行して進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画1の果実成熟初期段階のアスコルビン酸転流に関わる輸送体の探索に関して、当初の予定通り次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を実施し、果実成熟初期段階に有意差をもって発現している輸送体候補タンパク質遺伝子のリストの作成を完了した。また、計画2の果実成熟期に活性化される未確定アスコルビン酸生合成経路の同定に関しても、ほぼ予定通り着目したアルドノラクトナーゼの酵素活性を指標としたトマト果実における局在解析を完了し、隔壁の膜画分から同酵素の部分精製が進行中である。以上の理由から、初年度はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
計画1)果実成熟初期段階(immature green stage; IMG)のアスコルビン酸転流に関わる輸送体の探索:リスト化したトランスクリプトームデータより、膜局在タンパク質に候補を絞り、リアルタイムPCRによる発現検証を実施するとともに、最終的に候補遺伝子と判断した標的について、ウイルス誘導性ジーンサイレンシング(VIGS)法を実施し、各成熟ステージの果実におけるアスコルビン酸蓄積量におよぼす影響を評価すること、また当該遺伝子変異体が入手可能な場合は同変異体による各種パラメーターの評価を実施する。で、目的のアスコルビン酸輸送体候補の探索を進める。VIGS法が困難な場合、タバコ培養細胞への異種発現系によるアスコルビン酸取込み評価の実施も検討する。 計画2)果実成熟期に活性化される未確定アスコルビン酸生合成経路の同定:前年度に引続きラクトナーゼの部分精製を進め、nanoLC/MSにより候補タンパク質の配列情報を得た後、該当遺伝子のクローン化を実施する。遺伝子クローン後は、組換え体タンパク質による各種酵素学的特性を検証するとともに、果実成熟に伴う同遺伝子の発現変動についてリアルタイムPCRで検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの影響により、3月予定の研究が実施できなかったことに加え、参加予定していた3月開催の関連2学会が中止になったため。
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