研究課題
トマトをモデルとして果実のアスコルビン酸高蓄積の事由を遺伝子・タンパク質レベルで解明するために、1)包括的遺伝子発現解析による果実形成初期段階における葉からのアスコルビン酸の転流に関わる輸送体の探索、および2)果実成熟期に活性化される未確定のウロン酸を介したアスコルビン酸生合成経路の同定、に焦点を絞り、解析を実施した。1)に関して、未成熟果実(IMG)および成熟果実(RD)におけるトランスクリプトーム解析を実施し、IMGおよびRDでそれぞれ特異的発現遺伝子をリスト化した。特に膜タンパク質に着目してアスコルビン酸を含めた糖輸送に関連する候補遺伝子を複数に絞り込みを実施した。現在、各遺伝子の発現レベルを検証するとともに、タバコ培養細胞系を用いた組換え体タンパク質の機能評価を進めている。また、2)に関しては、既存のデータベースを用いてAKRファミリーの中からRD特異的に発現機能するガラクツロン酸還元酵素を探索し、結果として6遺伝子に着目した。各遺伝子の組換え体酵素を大腸菌およびタバコ培養細胞で発現し、ガラクツロン酸還元酵素活性を評価したところ、1遺伝子について有意なガラクツロン酸還元活性を検出した。プレリミナリーなデータより、同遺伝子のコードする酵素は既知のAKRとは異なる特性を有する新奇酵素である可能性が示唆されており、現在、組換え体酵素の詳細な酵素学的および生化学的特性の検討を進めている。
3: やや遅れている
年度初めにおいてコロナ渦による自粛期間があり、計画の遅れが生じたことが大きな要因となっている。しかし、過日における発現遺伝子解析およびトマト果実における新奇ガラクツロン酸還元酵素の同定と機能解析を進めることができており、その点でやや遅れていると自己評価した。
トランスクリプトーム解析により絞り込みを進めたアスコルビン酸および糖輸送関連候補遺伝子については、現在順次タバコ培養細胞系での組換え体タンパク質の機能評価の準備を進めており、今後も引続き逐行するとともに、興味深い候補遺伝子が同定された場合は、ゲノム編集によるトマト変異体を作出し、アスコルビン酸蓄積に及ぼす影響を評価していく。また現在酵素学的特性を評価中の新奇ガラクツロン酸還元酵素についても、その生化学的解析が済み次第、ゲノム編集によるトマト変異体を作出あるいは過剰発現植物によるアスコルビン酸代謝評価を進めてゆく方針である。
コロナ渦による自粛のため、2か月以上研究計画に遅れが生じた。次年度は、今年度までに見出した新奇ガラクツロン酸還元酵素の機能解析およびリスト化したアスコルビン酸輸送体候補遺伝子の植物培養細胞発現系の構築を中心に遅延している研究計画を実施する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Plant Physiology
巻: 183 ページ: 112-122
10.1016/j.bbamcr.2019.118563
ビタミン
巻: 94 ページ: 438-442