研究課題/領域番号 |
19K22285
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
水沼 正樹 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 准教授 (10343295)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 寿命 / 酵母 / 代謝産物 |
研究実績の概要 |
健康寿命の延長(健康長寿)は、人類が希求する重要なテーマである。近年、カロリー制限に代表されるように食餌制限が老化・寿命制御の一要因として見出され、世界中で最も解析・理解が進んでいる。研究代表者は、酵母を用いた解析から、寿命延長にアミノ酸の一種であるS-アデノシルメチオニン(SAM)が関与することを世界に先駆けて発見した。具体的には、SAMの合成促進は食事制限を模倣し、AMP依存性キナーゼAMPKの活性化を通して寿命延長する、これまでにないメカニズムを提唱した(Ogawa et al., PNAS, 2016)。驚いたことに、SAMの競合阻害物質のS-アデノシルホモシステイン(SAH)を酵母に作用させると、SAM合成が誘導され、寿命が延長した。また、カロリー制限を行ってもSAHの蓄積およびSAM合成による寿命延長が観察されたため、SAM合成促進および関連するシグナル伝達は、食餌制限のメディエーターという役割を持つ可能性が示唆された。そこで、本研究では、メチオニン代謝以外の寿命延長に資する代謝産物を網羅的にスクリーニングし、代謝産物による寿命延長メカニズムを解明する。 2019年度は、単細胞モデル(酵母)を用いて、寿命延長に資する代謝産物の探索を実施した。代謝産物を順次、野生型酵母に作用させ、経時的寿命(定常期以降の生存率で評価する)を測定した。これまでに約、100種類の代謝産物から6種類の有力な候補化合物が同定された。現在、さらにスクリーニングを続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代謝産物を順次、野生型酵母に作用させ、経時的寿命(定常期以降の生存率で評価する)を測定している。使用する代謝産物ライブラリーにはには、研究代表者が既に報告したメチオニン代謝産物も含まれている。このライブラリーを用いて、酵母の寿命延長を指標にスクリーニングを実施したところ、実際にメチオニン代謝産物が酵母の寿命延長に関与する物質として同定された。従って、実験系が予想通り機能している証拠を得ることができた。さらに、新規に5種類、酵母の寿命延長に関わる代謝産物として同定することができた。現在、さらにスクリーニングを進めており、間もなく保有しているすべてのサンプルについては一通り終了予定である。従って、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、酵母を用いたスクリーニングを再度実施し、結果の再現性を得る。さらに、多細胞生物・C. elegansも用いてスクリーニングを実施する。酵母と線虫で共通して寿命延長するもの、あるいはそれぞれ独立に寿命延長するものなど分類わけし、有望な候補化合物から、その寿命延長メカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に計画していた出張が新型コロナの影響で中止となり、残額が生じた。令和2年度に消耗品として使用する予定である。
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