研究課題
本研究の目的は、複製起点 (oriC) に依存しないDNA複製機構の詳細な分子機構を解明することである。生命の進化系統樹の根元に位置する超好熱性のアーキアの一種であるThermococcus kodakarensis のゲノムDNAから、oriC領域と、その隣に位置するイニシエータと予想されるOrc1/Cdc6をコードする遺伝子をそれぞれ欠失させた変異株を単離し、それが野生株と同等に増殖することを1年目の実験で示し、確かに oriCに依存しないDNA複製機能が存在することがわかった。現在の生物に備わったレプリコン仮説に従わないDNA複製様式は、現在知られている複製機構が構築される以前の、より生命の起源に近い原始的なものではないかと考え、その分子機構を解明するのが目的である。我々は以前に、近縁種のPyrococcus furiosusでOrc1/Cdc6が oriCに選択的に結合して局所的に二本鎖を開裂することを示しているので、T. kodakarensisに存在するOrc1/Cdc6がイニシエーターとして機能するのかを調べた。Orc1/Cdc6を単離精製しようとしたが、非常に溶解性が悪く、不溶化したものを精製してリホールディングすることで、何とかATPase活性を有する可溶化タンパク質として単離できた。検出されたOrc1/Cdc6のATPsse活性は、oriC配列依存的に抑制されたので、ATP型としてoriCに結合し、複製開始のスイッチを入れる可能性があると考えた。しかし、in vitroでoriC領域の二本鎖を開裂する活性は未だ検出できていない。oriC欠失変異株では野生株に比べて、RadAリコンビナーゼの産生量が上昇していることが観察されるので、T. kodakarensis では oriC依存と非依存の2種類のDNA複製様式を使い分けているのではないかと予想した。
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Nucleic Acids Res.
巻: 50 ページ: 3601-3615
10.1093/nar/gkab799