研究課題
本研究では、多細胞性シアノバクテリアAnabaena sp. PCC 7120が形成する分化細胞の機能をゲノムレベルで改変する技術を開発し、外部から導入した代謝経路や人工的にデザインした遺伝子システムのみが機能する人工細胞分化システムの構築を目指す。本研究においては、mRNA中のACA配列を認識・切断するリボヌ クレアーゼであるMazFを分化細胞特異的に発現させることで、分化細胞に元々存在するmRNAを分解し、さらにその細胞内でACA配列を持たない人工合成遺伝子を発現させ、細胞機能を入れ替える。まず、MazFにより ACA配列を除去したmRNAが優先的に翻訳されるようになることを確かめるため、大腸菌をホストとし、GFPをレポーターとして実験を行った。その結果、MazFの発現条件下では、ACA配列を除いたgfp遺伝子(gfpP)から合成されるGFP量が、元々のgfp遺伝子から合成されるGFP量よりも高くなることが示された。しかし、 MazF発現の効果がまだ充分ではないため、その発現量を厳密に調節し,最適化する必要がある。しかし,シアノバクテリアでは厳密に遺伝子発現を制御するシステムが確立しておらず,分化細胞での遺伝子発現を厳密かつ自在に操作する技術の開発が不可欠であった。そこで,分化細胞での遺伝子発現制御に関わる転写因子DevHの機能解析を進めるなど、分化細胞特異的に遺伝子発現を制御する技術の開発を進めた。また、分化細胞での遺伝子発現を任意のタイミングでon/offできるようにするため、テオフィリンリボスイッチによる遺伝子発現制御系を導入した。テオフィリンの有無により,遺伝子発現をスイッチングできる系を確立することに成功した。さらに,ゲノム編集ツールCRISPR-Cpf1システムを導入し,遺伝子改変の効率化を実現した。これらの基盤技術が確立したことで,今後研究の発展が期待できる。
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