研究課題/領域番号 |
19K22292
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
平野 展孝 日本大学, 工学部, 准教授 (10409089)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 合成生物学 / 生合成経路 / 有用物質生産 |
研究実績の概要 |
合成生物学分野では、有用物質生産を目的として、人工的に設計した代謝生合成経路を微生物に導入する研究が盛んに行われている。しかし、内在代謝経路への中間体の流出や、外来代謝経路による補酵素の一方的な消費による酸化還元バランスの破綻、代謝経路に係る物質の毒性や不安定性などの理由により、十分な合成量が得られない場合が多々ある。本研究課題では、代謝経路全体を細胞内の微小空間内に区画化することにより、中間体の蓄積や内在酵素による副産物の生成を抑制し、更には、代謝経路に必要な補酵素の再生経路を微小空間内に内包することで、微小空間内での生合成反応を持続可能にする合成生物学ツールの開発を目指す。具体的には、細胞小器官が存在しない原核生物における代謝経路全体の人工的な区画化を目標として、天然型微小区画を材料に、その内在酵素を変更することで、より汎用性の高い補酵素再生経路を持つ基盤微小区画の構築を行い、副産物生成が課題となっている汎用化成品原料の生合成経路の区画化を目指す。令和2年度は、大腸菌において、微小区画の組換え体の生産を行うため、殻タンパク質遺伝子5種類をオペロン化した発現プラスミドの構築を完了した。また、内在酵素遺伝子7種類をオペロン化した発現プラスミドの構築と、合成生物学分野において汎用性の高い補酵素再生経路を持つ基盤微小区画を構築するための遺伝子2種類、及び、微小区画への内包を目的として副産物生成が課題となっている汎用化成品原料の生合成経路遺伝子7種類のクローニングを行っている。今後は、各遺伝子をクローニング出来次第、天然型微小区画への内包を目的として、各遺伝子をオペロン化した発現プラスミドの構築を行ってゆく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年度当初から、新型コロナウイルス対応により、密を避けるため、研究室での実験を伴う研究活動の人数制限、時間制限により実験遂行に支障が生じている。徐々に制限は緩和されているが、感染状況によっては再度制限が掛かる可能性もある為、予断を許さない状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
微小区画の殻タンパク質遺伝子をオペロン化した発現プラスミドの構築を完了したので、大腸菌における細菌微小区画の組換え体の生産を行い、微小区画内への緑色蛍光タンパク質の内包により、大腸菌細胞内・試験管内において、殻構造の形成を確認する。次に、内在酵素遺伝子をオペロン化した発現プラスミドの構築を完了次第、天然型微小区画の酵素活性を確認する。その後、天然型微小区画の内在酵素を変更することで、合成生物学分野において汎用性の高い補酵素再生経路を持つ基盤微小区画の構築を行う。最終的には、汎用化成品原料の生合成酵素を、そのまま細胞内で発現した場合、生合成酵素を細胞内で集積・近接化した場合、代謝経路全体を区画化した場合の中間体・副産物・目的産物の生合成量を比較することで、代謝酵素の集積・近接・区画化の効果を総合的に検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況に記載した通り、令和2年度当初から、新型コロナウイルス対応により、密を避けるため、研究室での実験を伴う研究活動の人数制限、時間制限により実験遂行に支障が生じた。研究実施の遅れに伴い、研究費執行にも遅れが生じたため、次年度使用が発生した。また今後は、研究実施の遅れを取り戻すべく、研究補助者の雇用(人件費としての使用)を予定している。
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