これまでに筆者らが研究対象としてきたSymbiobacteriumおよび類縁の4属は、16S rRNA遺伝子の系統樹でFirmicutesから独立したクラスターを形成し、ゲノムDNAG+C含量が高く、さらに呼吸酵素シトクロムオキシダーゼ複合体を有する点でFirmicutesから大きく異なるが、現段階では嫌気性のグラム陽性低G+C含量グループに含められている。この状況は、類縁の菌群の情報が分離培養の困難さのために得られておらず、正確な系統的評価がなされていないことに帰因していると考えられる。そこで、これらの性質を手がかりに探索を展開し、同様の特性を示す菌群を分離・同定し、潜在する細菌門の存在を実証することを目的とした。 目的の菌を分離するために、上述の特性をもとに、(i)水底試料を主な分離源に(ii)高温(55℃)(iii)微好気(5% O2、10% CO2)で栄養培地を用いた液体培養を行う検討を開始した。その結果、以前にSymbiobacterium類縁菌の分離源として高い効率を示すことが判明していた乾燥カキ殻から目的の菌を含むと予想される培養液が効率よく得られる可能性を強く示唆する結果を得た。そこで、同培養液から目的の菌を単離するための選択法を複数考案して実施した。 上記と同時に、対象とする分類群に含まれることが予想される既知細菌Caldinitratiruptor microaerophilusについて、その培養特性を調査するとともに、全ゲノム解読を実施した。さらに、同菌の培養細胞について、シトクロムオキシダーゼ活性を検定したところ、予想通り活性が認められること、呼吸阻害剤アジ化ナトリウムの添加で細胞の増殖が阻害されることを確認した。これらの証拠をもとに、さらに目的とする細菌分類群の存在を明確にするとともに、酸素を用いた呼吸の起源についての情報を集積する。
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