研究実績の概要 |
本研究では、昆虫=微生物共生系に着目した革新的な抗菌ペプチドの探索法を開発する。代表者は昆虫アブラムシと共生細菌の間の共生の分子機構を解明する研究に従事してきたが、その過程で偶然に、ゲノムが明らかであっても従来の方法では同定が不可能な、新しいタイプの抗菌ペプチド群を発見した。本研究では、昆虫=微生物共生系のトランスクリプトーム・ゲノムデータから新規抗菌ペプチドをシステマティックに探索する手法を開発する。共生進化のユニークな相互作用が生み出す、新たなタイプの抗菌性分子の発見が期待される。
本研究は3つの課題から構成される。研究1:昆虫共生器官のRNA-seqデータ収集については、昨年度までに取得したセミ等の昆虫の共生器官のRNA-seqのデータ解析を実施した。研究2:RNA-seqデータから抗菌ペプチドを探索するプログラムの開発については、すでにプロトタイプとして開発済みのエンドウヒゲナガアブラムシ用の新規抗菌ペプチド探索手法をパイプライン化し、汎用性を高めた。さらに、最近登場したAlphaFold2などの機械学習を用いた革新的なタンパク質構造予測の組み込みを試みた。研究3:新規抗菌ペプチド候補を合成し抗菌活性を調べる、については、昨年度代表者が発表したシロアリゲノム(Shigenobu et al., 2022 PNAS)中に、シロアリ特異的遺伝子であるTYペプチドファミリーを見出し、これらの抗菌活性を調べた。その結果、興味深いことに、ある種の微生物に対する生理活性を有することが明らかとなった。そのため、TYペプチドの機能をさらに調べるべく遺伝子発現や局在なども検討した。
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