本研究では自然界に生息する微生物の中で植物性乳酸菌に注目し、植物性乳酸菌の環境中における循環と、植物性乳酸菌が植物にどのような関係を持っているのかを、植物の病害抑制効果の視点から明らかするにことを目的としている。植物性乳酸菌は動物の自然免疫システムを活性化させて、ヒトや家畜の健康に寄与することが知られているが、その植物性乳酸菌の由来については十分な理解がなされていない。また、植物の茎葉には、植物性乳酸菌が定着しているが、自然界における植物に対する植物性乳酸菌の役割についての理解は不十分である。植物性乳酸菌の環境中における動態と、植物に対する病害抑制効果を評価することにより、環境中における植物性乳酸菌と植物・動物との相互関係を包括的理解しようとするものであり、植物の病害防除への応用も期待される。本年度は、植物性堆肥から乳酸菌を単離し、難防除トマト青枯病に対する病害抑制効果の検討を予定した。研究室にて作成した落葉堆肥を滅菌蒸留水に懸濁し、ミラクロスで濾過後、得られた濾液を乳酸菌選抜培地で培養し、植物性乳酸菌候補となるコロニーを単離した。同菌株ならびに農林水産省ジーンバンクから分譲された植物性乳酸菌3菌株をトマト幼苗に噴霧処理したのち、トマト青枯細菌に汚染した土壌に定植したところ、無処理のコントロール区では青枯病が発病したのに対し、植物性乳酸菌処理区では、特定の菌株で病抑制効果が認められた。
|