研究課題/領域番号 |
19K22305
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
林田 信明 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (80212158)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | ハクサイ / 分離集団 / 形態制御遺伝子座 / マッピング / 圃場 / ドローン / UAV |
研究実績の概要 |
本研究は、ゲノム解析にドローン技術と深層学習を導入し、作物の圃場形質を支配する遺伝子の探索法に革命をもたらす技術体系を提案し、実証することを目的としており、2019年度には実験を実施するための環境整備を行った。 作物の形状は、食感や成長速度、耐病性等に関わる重要な形質である。しかし、それを支配する遺伝子についてはほとんど明らかにされておらず、多くの作物の品種改良は表現型を指標に育種家の努力と経験によって進められているのが現状である。着目する形質とその原因遺伝子座の関係を明らかにする作業は、大きな分離集団の作成と評価など、ひどく時間と手間がかかるもので、分子生物学や遺伝学の視点から提案された効率化の試みには限界が見えていたため、全く異なる視点からのアプローチが必要であった。 そのため、本研究では材料としたハクサイ分離集団を作成し、圃場で栽培して、ドローンによって自動撮影し、その画像に紐付けした遺伝子情報(ゲノムデータ)とともにAIに学習をさせる。初年度の2019年には、研究費の交付によって必要な機材の調達を行い、ハクサイ圃場における自動飛行と自動撮影の準備を行った。しかし、国土交通省からの飛行許可がハクサイの栽培期間に間に合わず、当該年度の撮影は実施できなかった。しかし、材料として用意したハクサイ分離集団に対して目視による評価を行い、十分な多型が存在し、特定の遺伝子座にその原因を求めることができることを明らかにした。2020年にはドローンによる撮影を実施して、対象とした個体ごとの立体画像を経時的に作成することができ、ようやく最低限の準備が整った。しかし、撮影時の詳細な条件設定などに課題が残った。コロナ禍の影響により、これらの改善に十分な時間がかけられず、度重なる移動制限により他大学の助言者の協力を得ることもままならなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、ゲノム解析にドローン技術と深層学習を導入し、作物の圃場形質を支配する遺伝子の探索法に革命をもたらす技術体系を提案し、実証することを目的としている。2019年度には実験を実施するための環境整備を行った。2020年度には、対象となる圃場ハクサイの成長過程の撮影を実施した。 作物の形状を支配する遺伝子についてはほとんど明らかにされておらず、多くの作物の品種改良は表現型を指標に育種家の努力と経験によって進められている。着目する形質とその原因遺伝子座の関係を明らかにする作業はひどく時間と手間がかかるもので、全く異なる視点からのアプローチが求められている。 2019年度には、材料として用いるBrassica rapa(ハクサイ)の分離集団を準備した。遺伝情報の取得にはF2世代の97個体を用い、表現型の観察にはF2の自殖集団(F2S1)群を用いた。F2S1群を用いる事により、圃場での再現性と評価精度を高めるとともに、ドローンによる撮影検体数を増やしてAI の学習サンプル数を増やす効果も得られる。2019年にはドローンを飛ばせなかったので目視による評価を行い、これらの表現型について十分な多型が存在し、特定の遺伝子座にその原因を求めることができることを明らかにした。この知見は、ドローンとAI による解析の比較対象として有用である。 2020年には、約800個体からなるF2S1群を作付けし、約10回の航空撮影を実施し、対象とした個体ごとの立体画像を経時的に作成することができた。しかし、露出や分解能(飛行高度)等の課題が残り、AI解析には至らなかった。新型コロナによる移動制限や出勤制限により、これらの問題の改善に十分な時間が掛けられなかったことや、助言をお願いした学外の研究者とも十分な情報交換ができなかった事が、大きな律速要因として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
ハクサイ自殖集団(F2S1)群約800個体を、改めて圃場に展開する。また、この集団の一部の個体から作成した(F2S2)集団も育てる。定植から収穫まで約60日間の成長過程を、全個体について撮影記録する。GPSを用いた絶対座標及びAI による自動認識を用いて個体を識別し、個体ごとの空間的・経時的画像情報を蓄積する。天候による画像の変動が心配されるが、色見本の設置によりその変動を補正する。さらに解像度を上げるため、飛行高度を調節し、それによって必要となる撮影枚数や飛行時間についても工夫する。 ハクサイF2集団の遺伝子情報は、すでにRAD-Seq法によって取得できているので、このようにして得られた画像と配列情報を紐付けして、深層学習を行う。各個体を識別し、どのF2由来であるか(どの個体が姉妹であるか)判定することを目標に再学習と微調整を行う。次いで、カッピングや結球性など、すでに研究代表者が遺伝子座を明らかにした形質の極端な画像を判別させ、それと関連が深いとコンピュータが判断した遺伝子多型を表示させる。これをゲノムの参照配列と比較して位置を判定し、過去の研究と一致するかを評価する。さらに、まだ評価していない形質(定植直後の成長速度など)についても、遺伝子座の探索を行う。 また、レタスについても同様の遺伝子集団を入手して、解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
元々、2019年度に国土交通省からの飛行許可がハクサイの栽培期間に間に合わなかったために計画していた実験の一部が実施できなかった事による繰越金があった事に加え、2020年度にはコロナ禍により研究に大幅な制限が加わったため、予算執行に障害が生じた。 本年度は、これらの遅れを取り戻すため、また確実な研究の実施を担保するためにドローンなどの機材を補強し、データ解析のためのコンピュータもより強力なものを用意する。さらに、新たに解析対象を他の交雑集団や別の作物品目に広げるため、その種子親のゲノム解析も行う。これらには、前年度残額と本年度当初予定額を合わせた金額を必要とする。
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