昨年度までに、 イネ品種TC65、DV85、および両品種を親とするRILs(組換え自殖系統群)を供試材料として用い、これらのRNAをBrAD-seq法によりライブラリーを作成した。その後、各塩基配列を次世代シーケンサーにより解読し、それらのリードをイネゲノムへマッピングした。その結果、葉では発現しないが、根では両品種間で有意に差がある遺伝子群を選抜した。次に、これら遺伝子群の発現量を制御する染色体領域をexpression QTL(eQTL)解析により検出した結果、最終的に6つのeQTLを見出すことに成功した。このうち、第4染色体上に検出されたeQTL-4は、遺伝子のプロモーター領域における両品種間の配列の違いによってもたらされる可能性が示唆された。また、根および葉における本遺伝子の発現量をRT-qPCRにより測定したところ、根における発現量は日本型品種よりインド型品種で有意に高く、葉においては両品種ともにほぼ発現していないことが確認された。 そこで、eQTL-4近傍に位置する遺伝子の両品種間においてプロモーター配列を比較した結果、インド型品種においてのみ、本遺伝子上流にDNAトランスポゾンの挿入が認められた。この挿入に伴う発現量への影響を検証するため、両品種由来の異なる長さのプロモーター領域とレポーター遺伝子を連結し、これらを導入した形質転換体を作成した。これらのレポーター遺伝子の発現量を比較した結果、日本型品種の本遺伝子上流0.5kbから1kbの領域を含む個体では、インド型品種の同領域を含む個体に比べ、有意に発現量が低下することが判明した。さらに、両品種間の同領域に存在する既知のシス配列を検索した結果、候補となる8種類が見出された。
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